人との会話で、どう返せばいいかわからないものの中に、「褒められたとき」を挙げる人も多いのではないだろうか。謙遜しすぎても変な空気になるし、「ありがとう」と素直に受け止めても「調子に乗っている」と思われそうだし……。ついそんなふうに考えてしまう「褒め言葉」に対し、どのように返答すればいいかを教えてくれる本がある。元芸人でネタ作家である芝山大補氏の著書『おもろい話し方 ~芸人だけが知っているウケる会話の法則』だ。本書で芝山氏は、褒められた際、上手に謙遜しつつもサラッと会話を盛り上げるコツについて言及している。それはどういった返しなのだろうか。本書の内容をもとに、「褒められたときに使えるリアクション」を紹介する。(構成:神代裕子)
その「褒め」は本心かお世辞か
日本人は「褒められる」のが下手な人種だ。海外の人のように「ありがとう!」とサラッと受け止める人よりも、褒められたときに過剰に謙遜してしまう人の方が多いのではないだろうか。
しかし、謙遜も過ぎると、褒めた方は軽い気持ちで言ったのに「そんなに謙遜するなら、いっそ言わなければよかった」と、残念な気持ちにさせてしまうことにもつながる。
かといって、褒められて「うれしい!ありがとう!」と素直に受け止めると「調子に乗っている」と思われる可能性が否めないのも、日本人の特徴だ。
時々、SNSでも「褒められたときになんと返すのが正解かわからない」という人や、「学生時代に『かわいいね』とクラスメイトの女子から褒められたことにお礼を言ったら、裏で『あいつ、調子に乗っている』と陰口を言われたことがトラウマになっている」といったエピソードを見かけることがあるので、褒め言葉へのリアクションは、なかなか侮れないのだ。
覚えておきたい「褒められたとき」の返し方
そんな意地の悪い気持ちで褒める人なんていないと信じたいが、残念ながらゼロではないのも事実。
しかし、相手の本心を見極めるのは難しい以上、誰にでも通じるさらりとした返しを身につけておきたいと考える人も多いだろう。
本書には、そんな人のための「褒められたときの鉄板の返し」が3つ紹介されている。
「自分のキャラクターに合っているものや、その場のメンバーや状況に見合うものを選んで使ってみてください」とのことなので、どれならできそうかイメージしてみていただきたい。
① 自分で自分を持ち上げる
あえて「一度セルフで上げる」
「人から『すごいね』と言われたときに、『いやいや、そんなことないよ』『私なんてまだまだだよ』と、ただ謙遜しても面白くないし、かえって嫌味になることもある」と語る芝山氏。そんなときは、「自分で自分を持ち上げることで逆に自分を下げる」という返しがあるという。
・そうやねん、おれってカリスマやからな
・そりゃあ、まあ天才だから?
相手から「自分で言うなよ!」とツッコミが返ってくる返しです。自分を上げているように見せて、ちょい下げしている。この絶妙な返しが、笑いとともに相手に好印象を与えます。(P.117-118)
ただし、この返しはふだんあまり冗談を言わないキャラの人や、いつも自信満々でズバズバ言う人がすると、ボケだとわかってもらえず「なに調子に乗ってんだよ」と思われる恐れがあるので要注意とのこと。
② 謙遜ボケ
「自分の力以外」の要因を持ち出す
これは、自分以外のおかげにして謙遜しながらボケる方法だ。
「ありがとう、これが加工の力ってやつ?」
「(笑)」
「この前のテスト、学年で1位だったの!? すごいね」
「いやあ、毎日『頭良くなりますように』って神様にお願いしたかいがあったわ」
そのほか「今日の星占い1位だったからな」「ラッキーカラーの赤のTシャツ着てきてよかった~」など、「ラッキー」に置き換えてしまうパターンもあります。(P.120)
特に「ラッキー」に置き換えるパターンは、聞いた方もツッコミがしやすいので、笑いも取りやすそうだ。
きっと場が和むだろうなと想像がつく。
③ もう1回褒めさせる
褒めをもっと欲しがり、笑わせる
褒められたときに、相手に「もっと褒めて」と伝えるのも、「王道のウケる返し」と芝山氏は語る。
「え、ありがとう。ちなみに……もう1回言ってもらっていい?」
このくらいのリアクションをしたほうが笑いになり、相手も好感を持てることがあります。(P.122)
本書では、次のようなアレンジパターンも紹介されている。
・ありがとう。今の言葉、ツイッターで拡散しといてな
・ほんま? めっちゃうれしいから会うたびに言ってもらっていい?
いずれも相手からの称賛の言葉を異様に欲しがると言う返しです。(P.122-123)
ちなみに、筆者が褒められたときによく使っている技はこれである。
「えー、うれしい!もっと大きい声でもう1回言って」「ありがとう~!どうせならもっと人がいるときに言ってよ~」などと笑いながら言うと、大体そのボケの方に話が移っていく。
褒められたことにはお礼を言いつつも、その場はひと笑いが生まれて話が終わるので重宝している返しだ。
実体験として効果を感じているので、ぜひ皆さんも試してみていただきたい。
「おもしろい返し」でコミュ力アップ!
本当なら、こんなテクニックなどなしに「褒めてくれてありがとう」で済ませて良い話なのだろうが、謙遜が美徳とされている国・日本では、なかなかそれがうまくできない人が多いのも実情だ。
世界的に見ても自己肯定感が低い国であることや、親から褒められずに育った人が多いことも影響しているのかもしれない。
だからこそ、こういった返しを知っておけば、相手の褒めてくれた気持ちを否定しないで会話を楽しめる。
本書には、他にも「リアクションの極意」や「おもしろい人」の話し方など「おもしろくて、話しやすい人」になるコツが満載だ。
いつもの自分よりもちょっとおもしろい返しをできるようになりたい方、コミュニケーション能力をアップさせたい方は、手に取ってみることをお勧めする。