雑談は、思いの外難しいものだ。気のおけない仲間ならともかく、そうではない人を相手にした時に「何話せばいいんだろう……」と気まずく感じたことがある人も少なくないだろう。さらに、なんとか話題を捻り出して話を振ってみたものの、イマイチ盛り上がらずに後で落ち込んでしまった、なんて経験がある人もいるはずだ。誰とでも気軽に話せる人もいるが、そういう人は一体どんな話をしているのだろうか。本記事では、ネタ作家の芝山大補氏の『おもろい話し方 ~芸人だけが知っているウケる会話の法則』をもとに、会話が盛り上がる人と盛り上がらない人の話は、何が違うのかを紹介する。(構成:神代裕子)
雑談が盛り上がらない理由
社会に一歩出ると、「何かと話さないといけないのではないか」と感じるシーンに出くわす。
例えば、会社のエレベーター前で、あまり話したことのない同僚と一緒になった時。商談の前、メンバーがそろうまでの数分、クライアントと二人きりになった時。
「何にも話さないのも気まずいなあ」と思い、あなたはこんな質問をしてはいないだろうか。
「○○さんって、どちらにお住まいなんでしたっけ」
「△△さんは、お休みの日は何をされているんですか?」
すると、相手は答えてくれるものの、こちらも「そうなんですね……」と気が利いた返答ができなかったり、「別に……」とつれない返事をされたりして、会話のキャッチボールが続かなくなってしまう。
こうなると、後から「自分の話が下手なんだろうか……」と一人反省会をする羽目になる。
これは、「雑談あるある」だと思うが、どうしてこんなことになってしまうのだろうか。
『おもろい話し方』の著者・芝山氏は、そもそもの話題の振り方・質問の仕方が「話が盛り上がらず、相手と打ち解けられない典型」と指摘する。
「中身のある話」をしようとしてはいけない
では、「距離を縮められる”コミュ力の高い人”」は、一体どのような話題を振っているのだろうか。芝山氏が挙げた例は次のような内容だ。
・今日、空気が乾燥してますよね
・見てくださいよ、さっき服汚れたんですよね
このような「中身のない話」を積極的に会話に織り交ぜるのです。(P.4-5)
「それだけ?」と思った人もいるだろう。正直なところ、筆者もそう思った。
世間のコミュニケーションに関する本では「話をしっかり聞こう」「共通点を探そう」「リアクションを大きく取ろう」といったことが紹介されていることが多いが、それ比べると、少し方向性が違う。
しかし芝山氏は、「聞き方やリアクションはもちろん大切です。しかし、それ以前にもっともっと大切なのは会話のハードルを下げること」と指摘する。
中身のある話題を探してコミュニケーションを取ろうとすればするほど、相手も「中身のある話をしないといけない」と考え、話す内容を選ぶようになるからです。(P.21-22)
会話上手な人ほど、めちゃくちゃしょうもない、どうでもいい話を積極的に織り交ぜると言うのだ。
会話のハードルは、低いほどしゃべりやすい
このテクニック、芝山氏によると「芸人たちもよく使っている手法」だと語る。
例えば、平成ノブシコブシの吉村崇さんがその典型で、他の芸人から「吉村が一緒だとやりやすい」と高い評価を受けているという。
その理由は、彼がよく番組の冒頭でどうでもいい言葉を大声で叫んだりすること。それにより会話のハードルがグンと下がり、周りが発言しやすくなるのだと芝山氏は指摘する。
つい、中身のある会話をしないと話が続かないのではないかと思いがちだが、実はそうではないらしい。
確かに、話しかけられる立場だと考えても、小難しい話やプライベートに切り込んでくるような話よりも、天気の話や前日に放送されていたドラマの話、「さっき猫がいました」なんて話の方が気楽だ。
会議でもすごい意見ばかりが出ていたら「私の意見なんて……」と思って話せなくなるが、「アイデア出しだから、荒唐無稽なことでもいいよ」と言われたり、最初に話し始めた人がすごくくだらないことを言ってくれたらみんなが積極的に発言するようになったりする。それと同じことなのかもしれない。
「しょうもない話」が心の距離を近づける
「中身のある話をしなくてもいい」
このことは、何よりも私たち自身の「何か話さなきゃ……!」という心のハードルを下げてくれるアドバイスなのだ。
すぐに実行できるこの手法、本当に有効かどうか、明日からでもぜひ皆さんに試してみていただきたい。
ちなみに、この「しょうもない話から始める」という手法は、LINEやチャットでも同じとのことだそうなので、打ち解けたい相手とは、まずはどうでもいいことをやりとりすることから始めてみてはいかがだろうか。