前回紹介したように、ココロをケアすることには、多くのメリットがあります。でも、わかっていただきたいのですが、効果の多くはすぐにあらわれる類のものではありません。注射や点滴のようにはいかないのです。
体調が悪くても、なかなか健康相談にも行かないのが現状ですから、ココロの健康相談ともなればなおさら行きにくいでしょう。たとえ会社にカウンセリングルームをつくっても、初めのうちは従業員はなかなか近寄ろうとしないのです。
また、実際に従業員たちがカウンセリングなどを利用するようになってからも、問題は起こります。これから紹介するのは、ココロのケアの仕組みを導入した会社の人事担当者の悩みです。
◎「怠けているとしか思えないのに、本人はうつっぽいと言う。本当は、本人と直接やりとりしたいのですが、あいだにカウンセラーが入っているので、手が出せないのです」
◎「ココロのケア対策を取り入れたら、ココロのトラブルが表面化する社員が一気に増えてしまいました。人事部はその対応に追われ、ほかの仕事に支障が出ています」
◎「すぐに医師の診断書をとって、休職を繰り返す社員がいます。そのため、健康な社員にしわ寄せがいって彼らの不満が高まり、『何で人の分までやらなきゃならないの?』と怒りをぶつけられます」
◎「ココロにトラブルを抱えた社員を復帰させてフォローできるような、余裕のある部署や管理職がいません」
◎「部下との人間関係の問題をカウンセラーに頼ってしまうと、上司のほうも成長しなくなるのでは?」
こうした問題は、多くの企業に共通するものです。
私の印象では、経営者の意識改革から始めて、従業員がココロのケアのためのサービスを利用するようになり、欠勤率や離職率の低下という数字になってあらわれるには、少なくとも2年から3年はかかるという気がします。