会社で働く人が体やココロに変調をきたしたとき、それに最初に気づくのは上司のはずです。

 ところが、実際には、「部下が調子を崩したのは、自分のOJTや指示のしかたが悪いせいだ」と思い込んで、部下のトラブルを隠そうとする上司が少なくありません。それはとても怖いことです。

 上司が部下をカウンセリングに行かせないようにしたために、私たちカウンセラーもケア担当者も本人の様子を把握できず、問題を深刻にしてしまうのです。

上司の態度が
部下の症状を悪化させる例

 上司のまずい態度が部下の症状を悪くしてしまう例としては、次のようなものがあります。

◎人事部に報告しない

 仕事のできる人が、ココロのトラブルが原因で不定期に休むようになっても、「人事に報告してしまったら、査定に響いてしまう」と、本人のためを思って隠してしまうケースはよく見られます。

◎「やることをやってから休め」と言ってしまう

 部長は休職することに同意しても、直属の上司である課長がひとこと、「やることをやってから休めよ」と言ってしまうことがあります。それでは部下は休めるはずがありません。精神科医の診断を受けて、「休むように」と言われたのに、まだ会社に出てきている。それを知ったカウンセラーが本人に事情を聞いてみると、「課長からそう言われたんです」と言うのです。そんなときには、すぐに休む必要があるのは言うまでもないでしょう。

◎上司が冷たく突き放す

 上司によっては、「こいつは戦力にならない」と判断すると、本人をケアするのではなく、冷たく突き放してしまう人がいます。その態度の変化を本人が感じた場合もまた、不安から休めなくなってしまい、トラブルを悪化させてしまいます。

 このほかにも、

 「どうせカウンセリングを受けても、『休め』『薬を飲め』『仕事の量を減らせ』としか言われない。受けるだけムダだ」

 と、部下にカウンセリングを受けさせようとしない上司や、

 「カウンセリングを受けると、早退したり、仕事の量を減らしたりするようアドバイスされて、そのことがストレスになるんです」

 という部下の訴えを受け入れて、カウンセリングを受けるのをやめさせてしまう上司もいます。