副業コンサルタントとして、主宰の副業・起業スクールで多くの副業家を輩出・支援してきた下釜創氏は、「一生後悔しない副業の始め方、選び方、続け方」があると言う。下釜氏のはじめての書籍やりたいことは「副業」で実現しなさいでは、「あなたのなかにすでにあるスキル、眠っているスキルを活かした副業」を目指そうと説く。本連載では、話題の書の中から具体的なスキル、考え方を紹介していく。今回は、本業で「やりたいこと」を叶えるのが難しい4つの理由についてです。

【副業コンサルは知っている】本業で「やりたいこと」を叶えるのが難しい4つの理由Photo: Adobe Stock

本業で「やりたいこと」を叶えるのが難しい4つの理由

 会社で本業を持っている会社員のなかには、副業は副収入を得るための腰掛け的な仕事と捉える人も多いようです。けれど、今までの連載でも触れたように、自分のやりたいこと&自己実現は副業でこそ叶えるべき

 なぜなら、本業でやりたいことを実現するのは、難しいからです。

 本業でやりたいことを叶えるのが困難な理由は、大きく4つあります。

本業でやりたいことが叶えられない4つの理由
❶就職活動の際、自分は何がやりたいのか、何にやりがいを感じるかが、しっかりと自己分析できていない
❷やりがいをベースに就職活動をしているわけではない
❸企業は、働く人のやりがいを実現するために、存在しているわけではない
❹そもそもやりたいことを見つけるのは難しい

 以上の4つについて、順番に解説していきましょう。

❶就職活動の際、自分は何がやりたいのか、何にやりがいを感じるかが、しっかりと自己分析できていない

 多くの日本企業では、卒業予定の学生たちを対象に、在学中に採用試験を行い、パスした学生が卒業すると同時に勤務させる「新卒一括採用」が主流となっています。

 日本に生まれ育っていると、それが当たり前だと思い込んでしまいそうですが、これは世界に類がない日本独自の雇用慣行です。新卒一括採用では、社会人としての経験が未熟なうちに(というか大半はほとんどゼロに近いうちに)、多くの選択肢から働き先を定め、試験をパスして入社するのですから、働くやりがいについて自己分析する時間的な余裕はありません。自己分析より、企業分析により多くの時間を割くのが、就活生の常なのです。

 私は大学在学中から、就活生を支援する団体に関わり、学生を対象に就活に関するセミナーや研修といった活動を展開していました。ですから、自分自身は、卒業したら何をやりたいのか、自分の働くやりがいはどこにあるのかを、真剣に考えて就活したという自負があります。

大手商社2年目の先輩にOB訪問して驚いたこと

 でも、他の学生たちの就活を身近で支援してみて、私のようなタイプは少数派だという印象を強く持ちました。その活動の一環として、大手総合商社に勤務して2年目の先輩にインタビューした際、印象的な出来事がありました。

 就活の面接時には、面接官から志望動機や10年後のビジョンといった定型的な質問が出されます。そこで私は、商社マン2年目の彼に「面接時、志望動機やビジョンに関する質問には、どのように答えたのですか?」と尋ねてみました。すると、彼は首を傾げて少し考えてから、「何て答えたっけなぁ~。忘れちゃった!」と照れた笑顔で打ち明けてくれたのです。

 その答えを聞いたとき、「まだ2年前のことなのに、もう忘れたということは、ちゃんと考えて本気で答えていなかったんだ」と私は感じました。これは、商社マン2年目の先輩だけではないでしょう。

 就活面接対策のスキルの一つとして、自らの真の思いとは関わりなく、面接官の“受け”がいいと思われる志望動機やビジョンを語っている就活生が、おそらく多数派だと私は思っています。それは、新卒一括採用という日本独特の慣行に対する、現実的な対策の一つ。非難するのは簡単ですが、実際はそこまで深く考える余裕もなければ、経験もないというのが本音ではないでしょうか。