❷やりがいをベースに就職活動をしているわけではない

「本業」で働くやりがいが実現しにくい2番目の理由は、学生側もやりがいをベースに就職活動をしているわけではないからです。

 こんな興味深い調査結果があります。16歳から29歳までの男女1万人を対象として内閣府が行った調査で、仕事をする目的について尋ねています(2つまで回答可能)。

 その結果、1位を占めたのは、「収入を得るため」。84・6%を占めていました。それに続く2位になったのは、「仕事を通して達成感や生きがいを得るため」で15・8%、3位は「自分の能力を発揮するため」で15・7%となっていました(出典:2017年度『子供・若者の意識に関する調査』)。

 重ねてこの調査では、仕事を選択する際に重視する観点も尋ねています。

 その結果、「安定していて長く続けられること」を「とても重要」と答えた人が50・0%、「収入が多いこと」を「とても重要」と答えた人が46・0%だったのに対して、「自分のやりたいことができること」を「とても重要」と答えた人の割合は42・3%となっています。

 本業には、生きていくために必要な主たる収入源という意味もあります。そして若者には、本業=収入を得る手段と割り切っている現実主義者が少なくないようです。その現実主義は、間違っていないと私は思います。

 それは次の❸の内容に関係しています。

❸企業は、働く人のやりがいを実現するために、存在しているわけではない

 働く側の大半もやりがいを強く求めていませんが、企業側も働く人たちのやりがいを実現するために活動しているわけではありません。

 企業が存続し続けるには、何よりも利益を上げることが求められます。利益追求至上主義は褒められたものではないとしても、利益を出せずに赤字のままでは、企業は倒産する他ないでしょう。そして、働く人のやりがいの実現が、必ずしも企業の利益につながるとは限らないのです。

 現在では、近視眼的な利潤追求至上主義に対して、社会や投資家が以前よりも厳しい目を向けるようになっており、環境や社会やガバナンス(健全な企業経営を目指す、企業自体による管理体制)を重視した「ESG経営」が求められるようになっています。

 ESG経営では、働く人一人ひとりのやりがいにも十分な配慮が求められます。

 私が大学から新卒で入った「株式会社LIFULL」という企業は、働く人のやりがいにも配慮するビジョンと企業風土がありました。でも、そうした企業は日本ではまだまだ少数派であり、多くの日本企業ではESG経営をうたっているとしても、実態を伴っていないのが現状でしょう。

 やりがいを求めて、理想を掲げて就職すると、あとで思わぬ軋轢に悩まされることも考えられます。