定年前後の決断で、人生の手取りは2000万円以上変わる!マネージャーナリストでもある税理士の板倉京氏が著し、「わかりやすい」「本当に得をした!」と大人気になった書籍が、2024年の制度改正に合わせ改訂&パワーアップ!「知らないと大損する!定年前後のお金の正解 改訂版」として発売されました。本連載では、本書から抜粋して、定年前後に陥りがちな「落とし穴」や知っているだけでトクするポイントを紹介していきます。

定年退職の翌年、「しなくていい」と言われても、絶対にしたほうがトクなこととは?Photo: Adobe Stock

退職金は確定申告不要と言われているが…

 退職金は、基本的には確定申告は不要です。会社に「退職所得の受給に関する申告書」という書類を提出していれば、会社が退職所得控除を適用し、所得税と住民税を引いて、退職金を支給してくれるからです。ただし、「退職所得の受給に関する申告書」を提出し忘れると、退職所得控除を適用してもらえず、退職金に20%をかけた高い税金がとられてしまいます。

 高い税金がとられている場合は、退職金の支払い調書を見れば、勤続年数や退職所得控除の額が記載されていないのでわかります。申告書を会社に提出した記憶がないという人はチェックしてみてください。万一、税金を払いすぎていても、翌年、確定申告することで、払いすぎた税金は戻ってきますので安心してください(確定申告についてはp242を参照)。

 それ以外にもたとえば、次のような場合は確定申告をすることで税金が返ってくることがあります。

 まず、年度途中(12月末以外)に退職して、年末調整をしていない人です。もし、12月末まで在職していたら、会社がその年(1~12月)の年末調整をしてくれますが、それ以外の時期に辞めると年末調整をしていないはず。つまり、社会保険料や扶養控除、生命保険料控除など各種控除がされていないということですから、確定申告でこれらの控除を受ければ、税金が返ってくるはずなのです。退職した年に再就職をしている人は、新しい会社で退職前の給与と合わせて年末調整してくれますので、原則確定申告の必要はありません。

 次に、副業(事業所得)で赤字がある場合です。こちらも収入が差し引きされますので、戻ってくる場合があります。

 そして最後に、医療費控除がある人やふるさと納税をした人も、忘れずに確定申告をするようにしてください。

 確定申告をする時は、退職金も一緒に申告してみましょう。所得控除などが適用されて、税金が戻ってくる可能性があります。退職金は確定申告しても、払った以上に税金を取られる心配はまずありませんので安心して申告してください。

 たとえば、定年退職したAさんの例をご紹介します。

 Aさんは、去年の1月末で定年退職し、失業保険をもらいながら再就職先を探していましたが、なかなか決まらず、やっと年明けの1月から働き始めました。
前職の退職金は3000万円で、所得税と住民税が約98万円差し引かれています。退職金以外の収入は退職前の1か月分の給与55万円。
会社からは「退職金は税金の清算は終わっている、確定申告の必要はない」と言われていましたが、会社で年末調整をしていなかったため、給与で払っている約3万円の税金の還付を受けようと確定申告をするときに、念のため退職金についても申告したところ、なんと28万円も所得税が戻ってきました!その上、住民税も12万近く戻ってくるとのこと。

Aさんは、退職金以外の収入が少なかったので、使い切れていない控除を退職金所得から控除することができたので、これだけの還付を受けることができたのです。

翌年の住民税も軽減される?

 確定申告をして所得税が安くなると、退職翌年の住民税も安くなります。
 よく言われることですが、退職して誰もが驚くのが、住民税の金額です。

 住民税は、前年の1~12月の所得により確定した金額を、翌年の6月~翌々年5月の間に支払うことになっています。つまり所得税より1年遅れてくるわけです。
 退職時に手続きをすれば、次の5月までの残りの住民税は、退職金や最後の給与から引いてもらえます。

 6月以降の住民税は、再就職していない場合は、基本的には自分で支払わねばなりません。そして、その額は、前年の高い所得を基に計算されているので、退職した月にもよりますが、負担が重くなるのです。おおよそ、会社員時代に給料から天引きされていた住民税と同じくらいの額だと考えておけばよいでしょう(退職金にかかる住民税は退職金から天引きされているので翌年請求が来ることはありません)。正確な金額は、6月ころに、1月1日時点で住民票のある市区町村から請求が来るのでわかります。支払い方法は、1年分を4分割で支払うか、一括で支払うかのいずれかを選びます。
 確定申告で所得税を取り戻せれば、退職した翌年の住民税も安くなります。住民税を安くするためにも、確定申告をして払いすぎの税金がないようにしておきましょう。
 ちなみに税金を取り戻す「還付申告」の期限は翌年1月1日から5年間です。申告を忘れていた場合でも、5年以内であれば間に合います。

 *本記事は「知らないと大損する!定年前後のお金の正解 改訂版」から、抜粋し新原稿を加えて編集したものです。