定年前後の決断で、人生の手取りは2000万円以上変わる!マネージャーナリストでもある税理士の板倉京氏が著し、「わかりやすい」「本当に得をした!」と大人気になった書籍が、2024年の制度改正に合わせ改訂&パワーアップ!「知らないと大損する!定年前後のお金の正解 改訂版」として発売されました。本連載では、本書から抜粋して、定年前後に陥りがちな「落とし穴」や知っているだけでトクするポイントを紹介していきます。

定年後、「個人事業主」になると、儲からなくてもメリットがあるこれだけの理由Photo: Adobe Stock

事業を「やる気」があれば「個人事業主」になれる

「退職後、なにか個人で事業を始めたい」という人は、個人事業主になることをおすすめします。
 退職後、事業に専念する人はもちろんですが、会社に勤めながら「事業をやるぞ!」という人でも個人事業主になれます。

 個人事業主かどうかは、確定申告の仕方の違いです。

 サラリーマンなどがちょっとした副業で稼いだ場合は「雑所得」として確定申告をするのが、一般的です。一方、「事業としてやる!」と決めた個人事業主は「事業所得」として確定申告をします。ちなみに、不動産賃貸業なら「不動産所得」として確定申告をします。「青色申告」を選択できるというのも個人事業主の大きなメリットです(本書のp133を参照)。

「事業所得」での赤字は税金を取り戻すチャンス

「まだ収入もないのに、個人事業主なんて、大げさじゃないだろうか」と思うかもしれませんが、そんなことはありません。私の事務所にも「事業を始めたい!」という人が相談に来ますが、最初から儲かっている人なんてほとんどいません。最初は、経費ばかりかかって、赤字になる人だって、たくさんいますが、事業をやる気があれば、個人事業主なのです。

「儲かるようになってから、事業所得として申告する」と考える人もいるかもしれませんが、それではもったいないのです。
 事業所得で赤字が出ている時は、税金を取り戻すチャンスだからです。

「事業所得」と認められるには……

 実は、「事業所得」「不動産所得」で赤字が出たら、給与所得と相殺できるのです。

 つまり、会社員として給与をもらっている人なら、給与と相殺することで、税金の還付を受けることができるので、事業が赤字でもおトクなのです。

 ただし、給与の税金の還付を受けたいばっかりに、やってもいない事業をでっち上げて赤字の申告をしたり、節税がしたいだけでちゃんと事業をするつもりがない、というような場合は、税務署から「これは雑所得で事業所得と認められないので他の所得と相殺できない」と指摘を受ける可能性があります。

 あくまでも、しっかりと事業をするのが大前提ということです。

 ちなみに、2022年分の確定申告より、年収300万円以下を「事業所得」とするためには、記帳・帳簿書類の保存が必要となりました。年収が300万円を超えている場合でも、あれこれ言われたくない場合は、記帳・帳簿書類の保存をしておいた方がいいでしょう。

 裏を返せば記帳・帳簿書類の保存をしていれば、「事業所得」と認められるということでもあります。

 ただし、帳簿などがあっても、事業収入が他の主たる収入(給与など)の10%未満の場合は、収入金額が僅少とされ、「事業所得」と認められない可能性があります。たとえば、給与が500万円の人は事業収入が50万円未満だと、「さすがにそれは事業じゃないでしょ」といわれかねないということ。
 また、概ね3年程度赤字続きで、かつ赤字を解消するための営業活動などをしていない場合も「事業所得」ではないといわれる可能性があります。

 いずれにしても決して高い壁ではないと思います。

 ただし、本書にも書いていますが、退職後に失業手当をもらおうと思っている人は要注意。退職後にすぐ「開業届」を出して個人事業を始めると、”開店休業状態”でも失業手当はもらえなくなります。

*本記事は「知らないと大損する!定年前後のお金の正解 改訂版」から、抜粋・編集したものです。