短期金利を現在の水準に維持し、インフレの勢いが収まらなければ短期金利の引き上げをちらつかせる。これが現在の米連邦準備制度理事会(FRB)の政策だ。問題なのは、金利を設定するのはもはやFRBではないということだ。債券市場がそれを行う。FRBは5月3日より後に短期の政策金利の誘導目標を0.25ポイントしか引き上げていない。しかし、家計や企業、政府にとって最も重要な金利は、米国債10年物によって設定される。その金利は今年春以降に1.5ポイント近く上昇しており、過去1カ月間では約0.75ポイント上昇した。筆者は、現在のサイクルで実体経済にとって最も大きな引き締めが今年末ごろに始まると予想する。米国債10年物利回りは現在4.75%近辺と、2007年以来の高水準にある。その日付は偶然ではない。世界金融危機は経済政策の遂行における劇的な変化を引き起こした。過去16年間の大半の期間、政策立案者たちは債券市場を力ずくで服従させてきた。FRBは長期債利回りの上昇リスクを快く思っておらず、利回りを抑え込むために米国債や住宅ローン担保証券を購入した。FRBが昨年、とうとうインフレ退治に着手すると、米財務省は自らの手で問題に対処した。金利を低水準に維持するために、財務省はFRBに保有している資金を活用し、発行する国債の年限を短くした。
【寄稿】米債券市場からのメッセージ
重要な米国債10年物利回りは今年1.5ポイント上昇している
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