また、そもそもの「美容」に対するイメージに、医療者側とのズレがあるように感じます。一般的に「男性美容」というと、若いユーチューバーがメイクで劇的に変化する、ビフォーアフター動画のようなイメージを抱く人が多いようです。あれほどのレベルのケアを日常生活に組み込むのは、ほとんどの人にとって面倒で難しいのではないでしょうか。

 そうではなく、その人自身のもつオーラ、雰囲気を大切にしたケアこそが美容なのです。チェンジではなくエイジングケア。目をパッチリとした二重にする必要はなく、眉をすっきり整えるだけ。そのくらいのちょっとした気づかいこそが、女性の求める清潔感なのです。

 けれど、それさえやらない男性が多いから、やればそれだけでブルーオーシャンを制することができます。

 女性は自身が薄毛に悩む場合もあるので「髪が薄い」といった遺伝や体質に関わる悩みには理解を示してくれます。しかし「清潔感がない」は許してくれません。なぜなら、お手入れしだいでどうにでもできる部分なのですから。

「美容」というとハードルが高く感じられるかもしれませんが、実際は身だしなみを整えるレベルの話なのです。それって、当たり前といえば当たり前の話ですよね。ほんの少しの意識で変えられて、周囲から抜きんでることができる。取り組む価値は大いにあるのではないでしょうか。

新しいことを始めるのが面倒なら
せめていまの習慣をすこし変えよう

 患者さんとお話ししていると、男性は『めんどくさがりでせっかち』な素質をもっていると、ひしひしと感じます。

 たとえばシミ取りにしても、女性は「何回もホワイトニングをして少しずつきれいな肌になっていくもの」と理解がありますが、男性は「1回できれいに取り去りたい」と望む方が多く……。すぐに結果が欲しいのですね。

「継続する」ことや「半年かかる」というロングスパンが苦手な人は少なくありません。

 レーザー治療後に「2週間、この軟膏を塗ってください」とお伝えしても、塗り忘れてしまう人は多く「まあ、いいか」「思い出したときに塗ればいい」と思っているうちに、結局やめてしまうようです。

 こういう特徴がありますから、男性があれもこれもと細かい美容をやろうとするのは無謀です。男性にとって、今の生活に『新しく何かを追加する』のは難易度が高いのです。