美術館に行っても「きれい!」「すごい!」「ヤバい!」という感想しかでてこない。でも、いつか美術をもっと楽しめるようになりたい。海外の美術館にも足を運んで、有名な絵画を鑑賞したい! そんなふうに思ったことはないでしょうか? この記事では、書籍『死ぬまでに観に行きたい世界の有名美術を1冊でめぐる旅』から、ご指名殺到の美術旅行添乗員、山上やすお氏の解説で「知っておきたい名画の見方」から「誰かに話したくなる興味深いエピソード」まで、わかりやすく紹介します。

睡蓮の池、緑のハーモニー クロード・モネ『死ぬまでに観に行きたい世界の有名美術を1冊でめぐる旅』より

知られざるモネの苦労! 気楽に睡蓮を描き続けたわけじゃない

──自宅に睡蓮の庭を作って絵を描いて、世間からも評価をされて…。モネはよほど恵まれた人生だったんでしょうね。

そうですね。確かにモネは画家の中では比較的幸せな人生を送った方だと思います。

ただ、やっぱりモネにも画家としていろんな葛藤があったんですよ?

──え、そうなんですか? 絵からは全然そんな風には見えませんけど?

例えば若い頃、セーヌ川に身投げをして自殺未遂を起こしています。

──えー!! モネが…。ど、どうして…?

それは若い頃絵が認められず、生活苦に悩んでのことだったそうです。

貧乏に苦しむエピソードは画家ではよくあることです。

──モネでさえ有名になる前は生活が厳しかったんですね。

そうなんです。ただ、モネの苦悩は評価を得られてからも続きます。

一番大きかったのは白内障を患ってしまったことでしょうね。

──白内障…。画家が目を患ったら、それは絶望したでしょうね…。

そうだと思います。症状が出始めたのは68歳の頃。この頃からモネの目の状態は悪くなり、色も判別できなくなりました。

下にあるのはモネが白内障を患っていた頃に描いた絵なんですが、これも「睡蓮」なんですよ?

睡蓮の池の片隅 クロード・モネ『死ぬまでに観に行きたい世界の有名美術を1冊でめぐる旅』より

──これが睡蓮ですか…。なんだかちょっと恐ろしいような色使いに激しいタッチに…苦悩がにじみ出ているようです! でも白内障って手術できますよね? あ、この時代だからなかったのか…。

いえいえ、この時代にも白内障の手術はあったんです。
ただ、現代のように医学が成熟していないため、当時の白内障の手術は大きな苦痛と困難が伴うものでした。
だからモネは手術を拒否していたんですよ。

だけど病気はどんどん進行し、失明手前まで陥ったモネは、周囲の説得に応じて手術を決意しました。
こうしてかろうじて視力が回復したんです。
それは死の3年前のことでした。

──成功してよかった…! この大きな「睡蓮、雲」は手術の後のものですか?

睡蓮、雲 クロード・モネ『死ぬまでに観に行きたい世界の有名美術を1冊でめぐる旅』より

はい! なんといっても大きな作品ですから何年にもわたって筆を入れ続けているんですが、完成したのは視力が回復した後です。

そう思って見ると、手術への恐怖や目が見えなくなることへの絶望を乗り越えたモネの強さのようなものが感じられるかもしれませんね。

画面全体としては静かですが、その中にある静かな炎のような…。

──それこそきっとモネの魂ですね!

(本記事は山上やすお著『死ぬまでに観に行きたい世界の有名美術を1冊でめぐる旅』から一部を抜粋・改変したものです)