帝国データバンクによれば、2023年度上半期(4~9月)の倒産件数は4208件(前年同期3123件)を数え、上半期としては2年連続で前年を上回り、4年ぶりに4000件を超えた。前年同期を34.7%上回り、年度半期ベースの増加率としては2000年度以降で最も高くなった。歴史的な低水準が続いたコロナ禍を経て、企業倒産は再び増加基調にシフトしている。多くの中小企業がゼロゼロ融資等で過剰債務に陥り、その解消に向けた抜本策が急務となるなか、昨年4月から運用開始されたのが『中小企業の事業再生等に関するガイドライン』だ。これまで公的機関も含めて全体の利用件数は公表されてこなかったが、このほど帝国データバンクが実施した調査により、初めてその実態が明らかになった。(帝国データバンク情報統括部情報編集課長 内藤 修)
『中小企業の事業再生等に関するガイドライン』の
帝国データバンク調査で判明した活用状況とは
『中小企業の事業再生等に関するガイドライン(以下、GL)』は、収益力の低下や過剰債務などによる資金繰り悪化を前提に進められる「私的整理」手続きのほか、事業再生に関する中小企業者・金融機関の基本的な考え方などを定めたもの。私的整理は、破産や民事再生法といった「法的整理」とは異なり、裁判所は一連の手続きに関与しない。昨年3月4日に公表され、約1カ月後の4月15日から運用が開始された。
コロナ禍で疲弊した中小企業向け支援策として、8月30日に公表された『挑戦する中小企業応援パッケージ』(経済産業省・金融庁・財務省)における「再生フェーズ」の体制整備項目のひとつとして「GLの運用改善等」が盛り込まれた。このほか、10月17日には金融庁が『GL事例集』(28事例を紹介)を公表するなど、運用開始から1年半かけて徐々に活用が進んできた。
帝国データバンクは、GL手続きのなかで中立的な立場から再生計画案の作成・調査を行う「第三者支援専門家」(弁護士を中心に、公認会計士・税理士・中小企業診断士など213人)を対象に電話ヒアリングを行い、判明した結果を基に分析した<調査期間は8月28日~9月29日、有効回答数は213人中156人(回答率73.2%)>。
調査結果を見ると、「第三者支援専門家」のなかで、今年9月までの1年半で実際にGL案件に関与したのは52人(構成比33.3%)いることが判明した。なかには「すでに複数件の実績がある」専門家も存在した。この52人に、手がけた案件数を尋ねたところ、GL手続きが開始となった件数は145件を数えた。
このうち、「再生型私的整理」は99件(構成比68.3%)、「廃業型私的整理」は46件(同31.7%)となり、「再生型」が全体の7割に上ることが分かった。なお、法的整理においては「清算型」が全体の97.3%を占め、「再生型」はわずか2.7%にとどまるなど、対照的な結果となっている。