自動車部品大手のマレリが私的整理の一種である「事業再生ADR手続き」を申請したのは3月1日だったが、実はその前日の2月28日、都内に本社を置く調剤薬局大手も事業再生ADR手続きを申し立てていたことが分かった。3月24日に第1回の債権者会議が行われる予定だ。(東京経済東京支社長 井出豪彦)
金融債務は1000億円規模
対象債権者数はマレリ以上
事業再生ADRとは経済産業相の認定を受けた公正・中立な第三者が関与することにより、過大な債務を負った事業者が法的整理(いわゆる「倒産」)によらずに債権者の協力を得ながら事業再生を図る制度で、対象となる債権者は金融債権者に限定される。ADRとは「Alternative Dispute Resolution」(裁判に代替する紛争解決手段)の略で、法的整理では裁判所に相当する「特定認証紛争解決事業者」は、いまのところ一般社団法人の事業再生実務者協会(代表理事:瀬戸英雄弁護士)しか存在しない。
今回、ADRを申請したことが分かったのは、クラフト(東京都千代田区)とそのグループ会社8社だ。
社名になじみは薄いが、「さくら薬局」というピンクの看板の調剤薬局を全国で1000店舗以上チェーン展開し、2021年3月期の売上高は1907億円に達する。グループの金融債務は1000億円規模とみられ、対象債権者はメインバンクの三井住友銀行を筆頭に80社前後もある。マレリの金融債務が1兆円を超えることを考えると負債額は小粒だが、対象債権者数はマレリの26社よりずっと多い。