美術館に行っても「きれい!」「すごい!」「ヤバい!」という感想しかでてこない。でも、いつか美術をもっと楽しめるようになりたい。海外の美術館にも足を運んで、有名な絵画を鑑賞したい! そんなふうに思ったことはないでしょうか? この記事では、書籍『死ぬまでに観に行きたい世界の有名美術を1冊でめぐる旅』から、ご指名殺到の美術旅行添乗員、山上やすお氏の解説で「知っておきたい名画の見方」から「誰かに話したくなる興味深いエピソード」まで、わかりやすく紹介します。
よくある名画の「モナ・リザ」が「世界一有名」になった理由
モナ・リザには超一級の有名作になった理由があるんですよ!
──なんですか、モナ・リザが有名になった理由って!? 他にもまだすごい技法が…?
いえいえ、今度はそういう話ではありません。モナ・リザはね、一度ルーヴルから盗まれているんですよ。
──え! 盗まれた!? でもこんな柵も防弾ガラスもある中から盗むって、できるんですか?
いえいえ、盗まれたのは100年以上前の、今みたいに警備が厳重じゃなかった頃です。
こちらの写真をご覧ください。二つの絵の間に隙間がありますよね? ここにモナ・リザは飾られていたんです。
──へえ~、こんなところに。え、ってことはモナ・リザは…。
他の作品に交ざって展示されていた。つまり、その頃のモナ・リザはルーヴルの神ではなかったんです。
──なんと! ずっと昔から今の地位だと思っていました! …で、この盗難事件で有名になったんですか?
はい、簡単にお話をすると、事件は1911年8月21日。
イタリア国籍のペルージャという男が前日の夜から美術館に忍び込んでいて、休館日の美術館からモナ・リザを盗み出してしまったんです。
──え~!? どんなテクニックを使って運び出したんでしょう?
服の中に隠し持って外に出たんですって。
──ズコーッ! ゆるゆる警備じゃないですか。
はは、今では笑い話ですけどね(笑)。
そして、美術館側は大騒ぎ! まだ「ルーヴルの神」ではないにしても、名画の1枚には変わりありません。
国境を封鎖して、パリの街中を探すんですが見つからない!
このことは「モナ・リザ盗難!」と大々的に新聞にも掲載されました。
多くの人がモナ・リザのかかっていない壁を見て涙し、お花を供えていったそうです。
あ、ちなみにこの盗難事件の捜査中、あのピカソも犯人容疑で逮捕されています。
──え!! ピカソ!? 共犯だったとかですか?
いえ、ややこしいんですが、簡単に言うと日頃の行いが悪かっただけの誤認逮捕でした。
──ネタじゃないですか(笑)。で、モナ・リザはどうやって発見されたんですか?
犯人は約2年間、パリの自宅にモナ・リザを置いていたんですが、結局それを秘密にできなくて自らバラしてしまって…ということですね。
──最後までネタじゃないですか(笑)。
モナ・リザが帰ってきたことで、またそれが一大ニュースとなり、フランス中を駆け巡りました。
発見のシーンも発表されているんですよ。
こうして、ある種の「勲章」のついたモナ・リザは、一躍有名になりました…という話です。
──ちょっと想像と違う勲章でした。でも、そうして神になったこのモナ・リザの笑顔、なんだかしたり顔に見えますね(笑)。
はは、確かに(笑)。
(本記事は山上やすお著『死ぬまでに観に行きたい世界の有名美術を1冊でめぐる旅』から一部を抜粋・改変したものです)