写真:黒田東彦・前日本銀行総裁日銀総裁の退任会見に臨んだ黒田東彦氏(2023年4月撮影) Photo:SANKEI

金融関係者の間で日本経済新聞の「私の履歴書」が話題になっている。日本銀行の前総裁である黒田東彦氏が、退任早々に書き手として登場したからだ。大いに歓迎すべき点も多いが、「黒田履歴書」を読んでいて常識的に「1年は早かったのでないか」と思う箇所があった。読者はどう思うだろうか?(経済評論家 山崎 元)

日銀前総裁の黒田東彦氏が
「私の履歴書」に話題の登場

 日本銀行の前総裁である黒田東彦氏が、日本経済新聞の連載コラム「私の履歴書」に登場して話題を呼んでいる。「私の履歴書」は、経営者や政治家、文化人などの「功成り名を遂げた人」が1カ月間の連載を通じて、これまでの人生を振り返るコラムだ。

 読者の中にも、いつかは自分が登場したいものだと思っている人がいるかもしれないが、率直に言って、評価の定まっている「枯れた人」が筆者に選ばれることが多い。

 かつて田中角栄氏がこのコラムに登場した後で、金権政治批判やロッキード事件の有罪判決で評判を落としたことによって、「私の履歴書」も大いに評判を落とした。そのことを受けた反省から日本経済新聞社が書き手の人選基準を変えたことによるとの噂話を聞いたことがある。

 黒田前総裁の場合、個人的なスキャンダルには全く縁がなさそうだが、日銀総裁在任期間中の実績をどう評価するのかについては、まだ評価が定まっているとは言い難い。

 また、内容にあっては、約10年に及んだ総裁在任期間のまだ時間を経ていないエピソードに触れることになるだろうから、これを良いと見るか否かには議論が分かれそうだ。

 ちなみに、日銀の金融政策決定会合の詳しい議事録が公開されるのは、会議から10年経過後である。