NECPhoto:SOPA Images/gettyimages

新型コロナウイルス禍がかなりの落ち着きを見せ、社会は少しずつ元通りになりつつある。だが、円安、資源・原材料の高騰、半導体不足といった問題はいまだに解消されていない。その結果、企業によって業績の明暗が分かれている。格差の要因を探るべく、上場企業が発表した直近四半期の決算における売上高を前年同期と比べ、各業界の主要企業が置かれた状況を分析した。今回は富士通、NTTデータなど「ITベンダー」業界4社について解説する。(ダイヤモンド編集部 濵口翔太郎)

富士通は営業利益「半減」
NECは営業利益「倍増」

 企業の決算データを基に「直近四半期の業績」に焦点を当て、前年同期比で増収率を算出した。今回の対象は以下のITベンダー業界4社。対象期間は2023年5~9月期の四半期(4社いずれも23年7~9月期)としている。

 各社の増収率は、以下の通りだった。

・富士通
 増収率:2.9%(四半期の売上収益9123億円)
・NTTデータグループ(※)
 増収率:53.2%(四半期の売上高1兆636億円)
・野村総合研究所
 増収率:8.1%(四半期の売上収益1854億円)
・NEC
 増収率:5.9%(四半期の売上収益8423億円)

※旧NTTデータは23年7月1日付で「NTTデータグループ」に社名を変更し、持ち株会社制に移行した。

 ITベンダー4社はいずれも増収となった。中でもNTTデータグループの四半期増収率は5割超と突出している。

 ただし過去に本連載で解説してきた通り、このNTTデータグループの大幅増収は、NTTグループにおける海外事業の再編によるところが大きい。

 NTTグループでは22年10月1日付で、旧NTTデータの海外事業と、海外でデータセンターやネットワークを手掛けるNTT Limitedを事業統合した。

 今回分析対象とした23年7~9月期は、NTT Limitedをはじめとする複数の海外企業を傘下に収めたことによる新規連結効果が働いた。

 一方で、上半期(23年4~9月期累計)の利益面に目を向けると、富士通は営業利益が前年同期比55.6%減、純利益が同47.5%減と大幅減益だった。対照的に、NECでは営業利益が前年同期比101.9%増(約2倍)、純利益が同225.0%増(約3.3倍)に拡大していた。

 これまでも本連載では、ITベンダー業界内では売り上げ・利益に“格差”が生じやすいことを指摘してきたが、上半期は富士通・NECの差が目立った形だ。追い打ちをかけるように、富士通は24年3月期の通期業績予想の下方修正を余儀なくされている。

 その裏側で何があったのか。次ページでは各社の増収率の推移を紹介するとともに、富士通・NECの利益面について詳しく解説する。