NTTデータが顧客の地方銀行約40行に対し、メインフレームからの刷新プランを提示して、日本IBMとの陣取り合戦で一気に王手をかけた。一方、SBIホールディングス陣営などの新興勢力もじわじわと勢力を伸ばす。次に動く地銀、次に消えるベンダーはどこか?『企業・銀行・官公庁・ITベンダー・コンサルが大騒ぎ! ヤバいDX 2023』(全13回)の#3では、その詳細の陣取り合戦の地図と、今後の残酷な予想をずばりお伝えする。(ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)
メインフレーム更改を巡り
ITベンダーが激しいつばぜり合い
NTTデータがぶっちぎり独走、最後発の新興SBIホールディングスが猛追、その他はそれぞれシェア減少で痛み分け――。
最近5年間で繰り広げられた、ITベンダー各社による「地銀勘定系(預金・融資などをつかさどる地方銀行の基幹システム)システム争奪戦」の中間結果はこのようになった。
これまで、メインフレームベースのシステムを、いくつかのグループで共同利用する方式が大半だった地銀勘定系システム。だが、本特集の#1『富士通メインフレーム撤退で業界激震!レガシーシステム問題の深刻、企業の半数が刷新断念!?』でも解説した「メインフレーム(大型汎用コンピューター)からの引っ越し」を契機に、ここ数年で大きな変動が起きている。
地銀は先行きが見えないメインフレームの供給体制や、実質的に日本IBM1社しかベンダーがいなくなることで価格が高騰する可能性に対して不安を持っている。勘定系システムはおよそ5~7年に1回のサイクルで「システム更改(ハードとソフトを新しいものに変えること)」があるが、そのタイミングで、ベンダースイッチを検討する勢いが加速しているのだ。
というのも、かつてはメインフレームしか選択肢がなかった地銀勘定系システムに、さまざまな進化形が登場しているからだ。
BIPROGY(旧日本ユニシス)、日立製作所などがオープン(ハードウエア、ソフトウエアのメーカーを問わない)系の勘定系システムを稼働させた。特にBIPROGYでは米マイクロソフトのパブリッククラウドAzure上で勘定系を動かせるようにし、2021年には北國銀行が、22年には紀陽銀行が勘定系をクラウド化した。
さらにSBIとフューチャーアーキテクト連合による、既存のシステムとはまったく別の新しい勘定系を最初からクラウド上で作って移行するという方式も登場している。
そんな中、NTTデータが「王手」をかけた。22年11月、同社は現在勘定系の共同化で顧客として抱える地銀約40行に対して、将来的にNTTデータが提供する「統合バンキングクラウド」上でシステム基盤を統合する、と発表したのだ。これまで、首位シェアながらもメインフレームベースの共同化グループの運営のみに徹してきたと見られてきたNTTデータの、まさかの大転回である。
乱戦模様の争奪戦の行方は今後どうなるのか。各ベンダーと地銀の思惑をつぶさに取材すると、勝負の行方と次に消えるベンダーも予想できる。次ページからは、各共同化陣営とベンダーの立ち位置、そして今後の状況まで一覧にまとめた。すると、残酷な陣取り合戦の予想図が見えてきた。