豊臣秀吉が一国一城の主として城下町を築き、江戸時代には北国街道の宿場として栄えた歴史を擁する滋賀県長浜市。現在も、歴史的建造物を生かした施設が軒を連ねる古い街並みとともに、琵琶湖の景観美も楽しめる県内随一の観光地として多くの人が訪れる。このロケーションを最大限に活用し、2022年末、新たに誕生した宿泊施設が話題を呼んでいる。森野ビルが手がける「NAGAHAMAライフスタイルグランピングホテル」だ。(取材・文/大沢玲子)
同社のルーツは、地場産業である繊維業向けの化学工業薬品販売を手がける森野商店を設立した昭和初期にさかのぼる。その後は産業構造の転換を受け、製造業向けの工業薬品販売へとシフトし、1965年には、街の発展を背景に不動産の賃貸・管理業を担う森野ビルを設立。
さらに地域に根付く不動産会社として、「住居やテナント物件の仲介や売買、土地開発や建築などの宅建業へと事業を拡大し、地域活性化のため未利用不動産を取得し、地元の方や観光客にも楽しんでいただける店舗の開発や誘致など、幅広く街づくりに取り組んでまいりました」。91年より同社代表取締役を務める森野弥太郎氏はそう語る。
異なるコンセプトの
貸し切り型ヴィラで構成
長浜市は市と地元民間企業が一体となって古建築の保存と再生を進め、旧市街地の活性化を図るなど、地域おこしの先駆者的存在でもある。だが、地元の若者の半数ほどが他の地域に出てしまうことや、日帰りの観光客が多いなどの取り組むべき課題を森野氏は指摘する。
どうしたら、長浜市ならではの多彩な魅力を認知してもらえるか。そこで長年、建築・不動産業を展開してきたプランニング能力を生かし構想したのが、ウィズコロナ時代も見据えたグランピング施設だった。