それでも、「中京区一になるんだ、京都一になるんだ、日本一になるんだ、世界一になるんだ」ということを、従業員に説き続けていったのです。
すると、初めは半信半疑であった社員も、いつしか私の掲げた夢を信じるようになり、その実現に向けて力を合わせ、努力を重ねてくれるようになったのです。また私自身も、そのことを確かな目標とするようになっていきました。
その結果、京セラはファインセラミックスの分野では、先行する巨大企業を凌駕し、世界一の企業に成長するとともに、多くの事業を展開し、売上が一兆円を超えるまでに成長していったのです。
企業に集う人々が、共通の夢、願望をもっているかどうかで、その企業の成長力が違ってきます。すばらしいビジョンを共有し、「こうありたい」と会社に集う従業員が強く思えば、そこに強い意志力が働き、夢の実現に向かって、どんな障害をも乗り越えようという、強大なパワーが生まれてくるのです。
この夢、願望に至るパワーの原動力こそが、「ビジョン」なのです。「会社をこのようにしたい」というビジョンを描き、それを従業員と共有し、そのモチベーションを最大限に上げていくことが、企業を発展させていくにあたり、大きな推進力になるわけです。
(本原稿は『経営――稲盛和夫、原点を語る』から一部抜粋したものです)