2024年1月からついに開始される「新NISA」。この機会をきっかけに投資をはじめてみようと考えている人も多いのではないだろうか。そんな新NISAは、実は初心者が投資をはじめるのに最適な制度と言える。だが、落とし穴がないわけではない。目先の利益に執着してしまったり、経済の動向を見て焦って投資をやめてしまったりする人も少なくない。
そんな課題を解決するために発刊されるのが『新しいNISA投資の思考法』だ。本書はこれまで37万人の資産運用を見続けてきたウェルスナビ・CEOの柴山和久氏が投資に必要な考え方を1冊にまとめたまさに決定版だ。本記事では先行して本文の一部を抜粋してお届けする。
「S&P500だけ買っておけばいい」をおすすめできない理由
NISAのような制度を利用した長期投資の効果を得るうえでの大前提は、世界経済全体に幅広く分散して投資することです。
そもそも投資でリターンを得るためにはリスクを取る必要があります。リスクを抑えて、同じリスクの中でできるだけ高いリターンを目指す方法が、分散です。
その際、投資する対象を、世界中の国の、さまざまな資産にバランスよく分散することで、長期的にリスクを抑えることができます。たとえばウェルスナビの場合は、世界約50カ国、1万2000以上の銘柄に分散投資をしています。
重要なポイントは、国や地域だけではなく、資産の種類も分散させることです。株だけではなく、債券や不動産、金といった、株とは違う値動きをする資産も組み合わせることで、分散投資の効果をより得やすくなります。
リーマン・ショックを例にとると、アメリカを代表する株式の指数であるS&P500は、2008年1月末時点を100とすると、2009年3月には51と、約半分に下がりました。
このとき世界中の株価が軒並み下落する中で、ほとんど注目されませんでしたが、実は米国政府が発行する債券や金の価格は逆に上昇していました。このため、株だけでなく債券や金、不動産などに分散した場合のシミュレーションによると、同じ時期の下落率は約3割ほどにとどまっています。
このとき、S&P500だけに投資していても、資産を売らずに持ち続けていれば、その後の相場は回復していきました。しかしリーマン・ショックで価値が半分になった資産を持ち続けるのは、容易ではありません。そうではなく、国や地域の分散、資産の種類の分散を行っておくことで、金融危機が発生したときのショックを和らげ、それを乗り越えやすくなります。
ただし、リーマン・ショックが起こってから、慌てて債券や金を買っても、その時点では高値で買うことになりかねません。何か起こってから投資対象を分散するのではなく、予め、さまざまな資産に分散しておくことが大切です。