農協の経営が揺らいでいる。2022年度の農協の保険事業の粗利が前年度から5.9%減となり、32組合が最終赤字に沈んだ。本編集部の試算で、5年後の減益額は1500億円超に上ることが分かった。(ダイヤモンド編集部副編集長 千本木啓文)
“奥の手”を封じられ、共済の新規契約が激減
農協を襲った“共済減益ショックの要因”は、農協職員が営業ノルマを達成するために、本来は不要な共済(保険)に加入する“自爆営業”への監視を政府が強化したことだ。職員に自腹を切らせてノルマを達成させる“奥の手”を封じられ、共済の新規契約が激減したのだ。
全国の農協の共済事業の大元締であるJA共済連が獲得した長期共済の新契約高は、2020年度に19兆3912億円に上ったが、21年度には16兆2343億円(前年度比16%減)、22年度には13兆2383億円(前年度比18%減)まで落ち込んだ。
それに伴ってJA共済連が農協に支払ってきた共済の販売手数料が激減し、全国の農協で共済事業総利益(粗利)が前年度から5.9%減、金額にして合計250億円の減益になった。
最終赤字に沈んだ農協は32組合と、21年度から4組合増えた。