儲かる農業 下剋上#9Photo:tommy/gettyimages

肥料の高騰などで苦境にある農家を尻目に、アグリビジネス業界では増収増益の企業が続出している。特集『儲かる農業 下剋上 ピンチをチャンスに』の#9では、農業業界の「農家搾取構造」の闇に迫るとともに、危機を生き抜いた農家にやってくる「バブル」の真相に迫った。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)

好調な肥料、食品メーカー、農薬にも
“下剋上”の波がやってくる

 農家の離農が急増し、食料供給に影響が出かねない状況になっている。

 とりわけ、酪農はシビアだ。テレビ番組などでは北海道の酪農家の窮状が報じられているが、実は、北海道より小規模で、価格競争力が低い本州の酪農家の方が事態は深刻だ。酪農家の戸数は関東で前年比9.3%減、北陸で11.1%減、近畿で10.4%も減っているのだ(農林水産省調べ)。

 危機に至った理由は、飼料代の値上がり分を生乳の価格に転嫁できなかったからだ。コメや野菜も同様に、肥料などの値上がり分を価格に反映できていない。

 離農した農家の農地などは、いずれ農業法人などが引き受けることになるだろう。だが、急激過ぎる農家数の減少は、食料供給に支障を来しかねない。農家の危機は農業界にとどまらず、消費者にとっても大問題なのだ。

 次ページでは、アグリビジネスの業績の好調ぶりとその要因を明らかにする。また、農業危機を切り抜けた後にやってくる農家バブルについても解説する。