お金に関する不安や問題を抱えている人は多い。将来のためにせっせと働き、貯蓄に勤しんでいる人も少なくないだろう。しかし、物価もどんどん上がる昨今、いったいいくらお金を持っていたら安心できるのだろうか。そんなお金の不安から自由になる方法は「ミニマム・ライフコスト思考を持って生きること」と提唱する人がいる。『超ミニマル・ライフ』の著者で執筆家の四角大輔氏だ。「ミニマム・ライフコスト思考」とは何か。本書の内容をもとに解説する。(構成:神代裕子)
いくらお金があれば、安心して暮らせるか
「お金が足りない」という事実は、人を不安に駆り立てる。
2019年に、金融庁の報告書で「老後の30年間で約2000万円が不足する」と発表されたことが大きな話題となった。
この「老後2000万円問題」により、いったい老後のためにいくらお金を貯めておかなければならないのかと不安になった人も多いはずだ。
特に、今は人生100年時代と言われ、何歳まで生きることになるかわからない。しかも、少子化により年金制度がいつまで保たれるかも怪しい状態となると不安が増す一方だ。
そんな不安から解放される方法の一つとして、「最低限必要な生活費」を計算しよう、と呼びかけるのが本書の著者・四角大輔氏だ。
最低限の生活コストを把握しよう
四角氏は、現在ニュージーランドで半自給自足の生活を送っている。
ここでは、独身時代は月5万円、家族3人でも月15万円あれば豊かに暮らせるのだという。
その結果、「人生で本当にやりたいこと=ライフワーク」に心おきなく集中できるようになった。(P.324-325)
四角氏の場合は、月15万円稼ぐのに、「①メディアで記事を2本書く」「②1社の相談役を務める」「③オンラインイベントを2回実施する」のどれか一つでまかなえてしまうそうだ。
そして、①②③それぞれに要する時間は、ざっくり見積もって2日ほど。そうなると、月30日間のうち、2日だけ働けば、暮らしていけるということになる。
月に28日間の自由時間だ! なんと素晴らしい話だろうか。
マネタイズを考えず、全力でクリエイトする
誰もが月2日間で15万円を稼げる力があるわけではないだろう。
しかし、「これだけあれば暮らせる」という最低限の金額を自分で把握しておけば、必要以上に働かなくていいというのは事実だ。
それ以外の時間は、自分が本当にしたいことに費やしても問題ない。
そう考えると、「最低限必要なお金」以上の金額を稼ぐために、人生の大半を仕事に費やすのはもったいないとも言える。時間は、人の命そのものなのだから。
そして、この考えのもと生きているのが、芸術家や起業家だという。
「ミニマム・コスト」を割り出して最小化しておけば、自分たちの創作活動やプロダクト開発でマネタイズを考えなくて良くなる。
金銭的なリターンを考えないで自分たちのしたいことに取り組むことで、圧倒的な感性と創造力を磨き上げることができるのだ。
四角氏によると、社会を変えるインパクトを生み出したアーティストや起業家の多くが、幼少期から30代までにクリエイティブな清貧時代を経験して、マネタイズを考えない創作活動やプロダクト開発に熱中しているのだという。
挑戦する勇気をくれる、「ミニマム・ライフコスト」
実は、筆者も「ミニマム・ライフコスト」を算出したことがある。それは、独立を考えた時だ。
会社員しか経験したことがなかったので、辞めた後に本当に食べていけるのか心配だったのだ。
そのため、「いくらあれば生きていけるか」を数ヵ月かけて割り出した。
この数字を把握したことで、「なんとかなりそうだな」とホッとしたことを覚えている。
「このくらいなら、貯金もあるし、いざとなったらバイトでもすればいい」。そう思えたことで、フリーランスという世界に飛び込むことができた。
何かに挑戦しようと思うなら、一度「ミニマム・ライフコスト」を出してみることをお勧めする。
四角氏も次のようにエールを送る。
「ミニマム・ライフコスト」を把握した上で、小さな勇気を持てれば誰にでも可能だ。(中略)
そして、「守り」のためだけじゃなく、人生を懸けたいと思うほどの「攻め」のためにこそ活用していただきたい。(P.328)
「この額さえ稼げればなんとかなる」。その額を知っておくことは、きっとあなたのお守りになるだろう。
そして、「人生の貴重な時間(命)を、本当にしたいことのために使おう」と、一歩を踏みだす勇気につながるはずだ。