今回のテーマは、「人間関係が苦しい時、仕事がうまくいかない時」のおススメの方法。
本連載の「超ミニマル・ライフ」とは、「どうでもいいことに注ぐ労力・お金・時間を最小化して、あなたの可能性を最大化する」ための合理的な人生戦略のこと。四角大輔さんの新刊『超ミニマル・ライフ』では、「Live Small, Dream Big──贅沢やムダを省いて超効率化して得る、時間・エネルギー・資金を人生の夢に投資する」ための全技法が書かれてあります。本書より、おすすめの方法、考え方ご紹介します。
監修:湯本優/株式会社cart CEO、医師、医学博士
消えゆくオフライン空間
「仕事で成果を出せたことより、しっかり休んでいたことの方が誇りに思える」
どんなに忙しくても必ず余暇を確保してきた筆者が、冗談まじりに言ってきた言葉だ。
前著『超ミニマル主義』では、「毎月の3連休」と「季節ごとの4連休」の取り方から、「9連休以上の長期休暇」を獲得する技術を徹底的に伝授した。
会社員時代は、その技術によって得たオフライン時間を──ノイジーな人間社会から逃れて心と体を軽くすべく──釣り・キャンプ・登山といった大自然への逃避行に費やした。
幸運にも、日本に住んでいた頃に通っていた、湖や山やキャンプ場のほとんどがケータイ圏外だったので、そこに行けば自動的にデジタルデトックスができた(15年以上前のことだが)。
だが今では、人里離れた温泉宿はもちろん、キャンプ場でも高速Wi-Fiが飛び交うようになり、ケータイ電波が海・山・湖の大半を網羅してしまった。
象徴的なのは、北アルプスのどの登山口からも歩いて2日以上かかる日本最後の秘境・雲ノ平でも、あるポイントで電波が入るようになったという。安全面においてはいいことだが、大好きなオフラインスポットだっただけに複雑な気持ちだ。
もはや日本では、デジタルノイズから逃げるのは不可能なのだろうか。もちろん方法はある。
全デバイスをOFFにしてしまえばいいのだ。
狩猟時代から変わらぬ脳と体を持つ現代人は、常時オンラインという異常事態に全く適応できない。デジタルデトックス習慣を身に付けることは、「ドーパミン過剰×情報ノイズ爆撃」時代における生存戦略といってもいいだろう。
ノイズレスな自然空間に身を置く戦略
ただし、言うのは簡単だが実践は難しい。
今や誰もが「ドーパミン依存症」「デジタル情報中毒(※1)」となっていて、それを断つ行為は、脳の要求に抗う行為となるため、かなり強い意志が必要となるからである。
そんなあなたに本書が提案したいのは、「デジタルデトックスできる自然豊かな場所」を見つけだすこと。半ば強制的に、そこに滞在したり、そこで体を動かすのだ。
ネット網に全包囲されつつある日本だが、辺境の山間や森林エリアには電波が届かない場所がまだ残されている(海辺は電波が届きやすく、車で行ける場所は壊滅状態)。
最近では、デジタルデトックスを売りにするキャンプ場や、ドーパミン・ファスティングを掲げる緑豊かなリトリート(心身を癒やすための宿泊施設)もできているので探してみよう。
人間関係が苦しい時、仕事がうまくいかない時、一つのことに集中できない時──何をやっても改善しないのに──オフライン状態で自然の中にしばらく身を置くだけで、あっさりと気持ちが落ち着いていく。
実は、この現象の理由は科学で明らかになっている。
自然の中にいるだけで、脳の「デフォルトネットワーク」が勝手に優位になるというのだ。
さらに次のような驚くべき効果を得られるという(※1)。
・脳波がアルファ波になる(リラックス状態)
・ビタミンDの体内生成量が増加する
・免疫力が高まる
・睡眠の質が改善する
・感情をコントロールしやすくなる
・幸福感が向上する
我々は、長い人類史において「昨日」まで、自然と共に生きていた。そんな人間にとって、「文明社会や都会のリズム」より「自然のリズム」、「デジタルノイズ」より「ノイズレスな大自然」の方が心地いいのだろう。
考えれば当たり前のことである。
一昔前は、ケータイ圏内がよいとされていたが、これからは「圏外こそが豊か」という価値観が主流になっていくだろう。なぜなら、地球上からそういった場所が恐ろしいスピードで消滅しているからである。
自宅から通えて、定期的に滞在できる自然豊かな「オフラインプレイス」を探してみよう。もし、おすすめの場所があるならば、「#私のオフラインプレイス」を付けてSNSでシェアしてほしい。
日本にもまだ、そういった宝のような場所が埋もれているはず。だから一緒に見つけだそう。
(本記事は、『超ミニマル・ライフ』より、一部を抜粋・編集したものです)
【参考文献】
※1 フローレンス・ウィリアムズ『NATURE FIX 自然が最高の脳をつくる 最新科学でわかった創造性と幸福感の高め方』NHK出版(2017)