「ヒット作を生み出したい」とは、ビジネスパーソンなら誰もが夢見ることだ。日本中の人がその商品の名前を知っている「メガヒット」ならなおさらよい。「綾鷹」「檸檬堂」「からだすこやか茶W」「SK-Ⅱ」「ファブリーズ」「ジョイ」…これらの商品は、ほとんどの日本人が知っているメガヒット商品だ。これらの商品を大ヒットに導いたのは、P&Gジャパン、日本コカ・コーラを渡り歩いた伝説のマーケター・和佐高志氏である。彼の初の著書『メガヒットが連発する 殻を破る思考法』(ダイヤモンド社)から一部を抜粋・編集して、ヒット作を生み出すコツを学ぶ。
化粧品に「ガンプラ」のアイデアを注入して大ヒット
2005年に発売された「SK-Ⅱ」のファンデーションで、私は画期的なイノベーションを開発しました。これが大ヒットになった「エアータッチファンデーション」です。
当時の一般的な消費者は、ファンデーションをパウダーでもリキッドでもパフで塗っていました。ここで、ユーザーでない私の客観的な視点が出てきます。どうしてパフで塗るのか、と。
私の中で「塗る」と言えば、思い浮かんだのが、ガンダムのプラモデルでした。いわゆる「ガンプラ」です。「ガンプラ」を綺麗に作るのにパフを使って塗る人はいません。上級者はエアーブラシを使って塗るのです。
同じようにファンデーションもスプレーみたいに塗れないか、と研究開発部門に聞いてみたら、「そんなことはできない」という。そこで、電機メーカーの松下電器産業(現パナソニック)に相談をしました。タンク内で静電気が起きる難しさはあったのですが、それを時間をかけて製品に結実したのが、「エアータッチファンデーション」でした。
高価なファンデーションになりましたが、爆発的に売れ、その年の化粧品新製品の賞レースを総なめにしました。
和佐高志(わさたかし)1990年、同志社大学文学部新聞学科卒業後、P&Gジャパン・マーケティング本部入社。医薬品、紙製品のマーケティングに始まり、化粧品&スキンケア、洗濯関連カテゴリー等を担当。ブランドと人材育成の実績を重ね、ブランドマネジャーからマーケティングディレクターへ。2006年、紙製品、化粧品&スキンケア事業部担当のジェネラルマネジャーとして、P&Lの責任を持つ。2009年より、日本コカ・コーラのお茶カテゴリーマーケティング責任者。「太陽のマテ茶」や「からだすこやか茶W」などの新製品発売および「綾鷹」ブランドの立て直しなどによるお茶カテゴリーV字回復を実現。2013年、同社副社長に就任し、「ジョージア ヨーロピアン」「世界は誰かの仕事でできている。」キャンペーンなど複数の大型ブランドのビジネス拡大推進をリード。2019年にコカ・コーラ社世界初となるアルコールブランド「檸檬堂」の開発責任者として成功を収め、最高マーケティング責任者に就任。2020年、日経クロストレンドが選出する、マーケター・オブ・ザ・イヤー大賞受賞。2023年、同社を退社。株式会社Jukebox Dreams(ジュークボックスドリームズ)を設立、同社代表取締役CEO就任。