米政界や金融界はここ数年、二酸化炭素排出ネットゼロへの移行が経済的に大当たりする可能性を空想し始めていた。「気候変動といえば雇用だ」とジョー・バイデン大統領は言った。ウォール街はグリーンエネルギーと聞けば利益を思い浮かべた。米自動車大手フォード・モーターは電動の「マスタング」とピックアップトラックを発売すると、時価総額が初めて1000億ドル(約14兆8000億円)を突破した。そうした空想は今年、終わりを迎えた。電気自動車(EV)需要が予想を下回ったことを受け、各メーカーは生産を縮小し、代わりに自社株を買い戻している。洋上風力発電事業者はプロジェクトを中止した。S&Pグローバル・クリーン・エネルギー指数は今年30%下落。フォードの時価総額は420億ドルに減少した。