また、90sのコミュニティはDAOの思想を取り入れた制度に設計しており、相談や情報交換など90s内での活動量・貢献度に応じて売却益連動の独自のインセンティブが付与されるようになっているという。

現在、Azitの吉兼周優氏、ナナメウエの石濵嵩博氏、YOUTRUSTの岩崎由夏氏などがコミュニティに参加している。5月11日に新たに募集を開始したところ、新規入会希望件数が1週間で100件を超えた。

90sの公式サイトのスクリーンショット
90sの公式サイトのスクリーンショット

「自分も1990年代生まれですが、同世代の起業家たちは『後輩起業家の相談に乗りたい気持ちはあるが、時間とお金、余裕がなくて対応しきれない』と悩んでいました。相互でフォローし合えるコミュニティがあれば、スタートアップエコシステムを活性化できるんじゃないかと考えたんです」と語る、国本氏。90sを立ち上げた理由について話を聞いた。

「父の2倍稼がないと、生まれてきた意味がない」

「父の2倍は稼げるようにならないと、生まれてきた意味がないと思っているんです」──国本氏のキャリアをひも解くと、開口一番で飛び出したのがこの一言だった。

国本氏の父親は、大阪を中心にリチウムバッテリーやスロットの製造などを行うネットホールディングス代表の国本昂大氏。その影響を受け、息子である国本氏も早い段階から経営に興味を持ち始める。

「学生時代から父の会社で働いていました。そこで刺激を受けてきたせいか、早く会社のお金を増やす側になるべくハングリーになってしまったと言いますか。今でも父が20代だったころと比較し、自分が本当に2倍稼げるかを確認しています」(国本氏)

父親流の投資手法だけでなく、世間一般の投資手法も学ぶため、大学卒業後は野村證券の投資銀行部門に就職する。だが、希望する部署の異動に「3年かかる」と言われて退職を決意。起業するか、それとも投資家になるかで迷っていたタイミングで、現役の起業家たちからキャリアについて助言をもらっていた。

「このときの出会いが、僕にとって貴重なものでした。あのタイミングで前職を辞めていなかったら、Azitの吉兼さんたちに出会えなかった。貴重なきっかけをもらえたと、とても感謝しています」(国本氏)

野村證券を退職後、父親の会社の経営に再び取締役として参画。2021年にはファミリーオフィスで投資を担当していたWake Up Interactiveがテンセントに二桁億円後半で買収されるなど、投資家としての結果も残し始める。手腕を発揮しながらも、国本氏のなかで沸々と湧いてきたのが「コミュニティをベースにした戦い方」だった。