「父は自社だけでなくグループ経営や投資にも積極的でした。その企業群がとても魅力的で、1社だけではない戦い方が強そうだと感じていたんです。90sのベースは、ここにあります。僕の周りにいる同世代の起業家たちが素晴らしい人たちばかりだったので、彼らと一緒になって戦うことができれば、父親を超えられると思ったんです」(国本氏)

野村證券での経験はもちろん、退職後に父親の会社経営へ参加して投資経験をさらに積み上げられたことも国本氏の背中を押した。

実は2020年12月から活動をスタートさせていた90s。当初はコミュニティ内のメンバーをメンターと投資先に分けてメンタリングを実施していたが、メンターに投資する機会も生じたため、コミュニティ内での垣根をなくすことにした。

強制ではなく、間接的につながる資本関係

冒頭でも挙げたが、90sの特徴は「1990年代完結型コミュニティ」「投資検討がスピーディ」「インセンティブ設計」の3つ。特に「インセンティブ設計」では、DAOの思想を取り入れている。

「90sは、投資先の起業家のみが参加できる仕組みです。そのなかでメンタリングも含めた相談や知見の共有が行われ、自社のバリューアップにつなげてもらいます。しかし、何かしらインセンティブがないと、すぐに形骸化してしまう。コミュニティでの活動がいい意味で強制的にならないよう、試行錯誤の末に取り入れたのがDAOの概念でした」

「また、コミュニティに属する起業家がイグジットした際、アドバイスした人たちに対してインセンティブが発生する仕組みになっています。こうすることで、みんながコミュニティ内で間接的な資本関係が結ばれる。個人的にはそれがコミュニティ内での関係値として理想的だなと思ったんです」(国本氏)

ボンボンが本気を出して父の2倍稼ぐ──90年代生まれの投資家が同世代完結型コミュニティで目指す成功
 

そのなかで、国本氏が自身に課した役割はコミュニティ内に所属する起業家が事業に向き合う環境を整備すること。具体的にはこれまでの投資経験を活かし、起業家がお金の部分で後々トラブルにならないようにする。例えば、株式の持ち株比率や契約内容を十分理解せずに資金調達してしまい、事業が伸びた後にトラブルになってしまうこともある。「同世代の起業家のなかで詐欺に遭ったり、搾取されてしまったりするケースを1つでも減らしていきたい」と国本氏は話す。

また、継続的な資金の提供に加え、参加する起業家たちが求める知見を持つメンバーを増やすなどコミュニティの活性化にも尽力する。

「誤解を恐れずに言うと、僕の強みは資産があり、その扱い方がわかることです。だからこそ、僕が個人的に良いと感じ、なおかつ才能を感じる人たちが成功するために資産を投資したいと思っています。優れた才能を持つ人材がコミュニティに加われば活性化し、いい方向へ働くはずです」(国本氏)