風薫る5月は京都散歩のベストシーズン。今月のイチオシは、日本絵画史のレジェンド「雪舟」でしょう。京都国立博物館だけでの開催です。雪舟ゆかりのスポットとて併せて、この機会に“画聖”のすべてに触れてみましょう。(らくたび、ダイヤモンド・ライフ編集部)
必見!巡回なしの京都限定特別展
日本絵画史を語る上で欠かせないキーパーソンが雪舟です。同志社大学今出川キャンパスに接する京都五山第二位の相国寺(臨済宗相国寺派)で修行し、明に渡り中国の画法を学び、多くの水墨画を描いた室町時代の画僧です。
その影響力は甚大で、戦国、安土桃山から江戸へと時代が移ろっても、長谷川等伯や狩野探幽など当代を代表する著名な絵師たちがこぞってリスペクト、雪舟の画風や筆づかいを学び、今でいう“推し活”に励みました。
京都国立博物館で5月26日まで開催中の『雪舟伝説―「画聖(カリスマ)」の誕生―』では、雪舟の国宝絵画全6件(一人の画家としては最多!)をはじめ、雪舟に憧れ、オマージュをささげた後世の絵師たちの作品が一堂に会します。他エリアへの巡回展がない、京都だけのスペシャルな展覧会です。
全7章構成のこの展覧会、魅せ方がとにかくユニークなのです。第1章「雪舟精髄」では、荒々しく力強い線やジグザグの視点誘導が印象的な代表作「秋冬山水図」をはじめ、「破墨山水図」「山水図」「四季山水図巻(山水長巻)」「天橋立図」「慧可断臂図(えかだんぴず)」と、国宝6件が集結します。第2章「学ばれた雪舟」では、後世に影響を及ぼした作品、無款のため伝雪舟となっている作品などが並び、雪舟をまとめて堪能できる貴重な機会となっています。
水墨画は、その名の通り墨の濃淡で表現されるものですが、じっと眺めていると、色彩が浮かび上がってくるような感覚に。建物の屋内に人物が描かれていたりして、目を凝らすほどに作品の情景に引き込まれていくことでしょう。
第3章は雪舟の画風を継承した長谷川等伯や雲谷等顔が、第4章では雪舟を神格化した狩野派へ……。後世の絵師たちの視点を通して雪舟の魅力を輝かせ、俯瞰できる仕掛けとなっています。「あれ?この構図、ついさっきも見たような……???」そんなデジャヴも楽しめます。
1897(明治30)年、帝国京都博物館として開かれた京都国立博物館は、特別展のほかにも見どころが満載。南門入り口から向かって右手に見える赤レンガ造りの建物は、日本建築界の草分けで宮廷建築家として活躍した片山東熊が設計を手掛けた「明治古都館」。表門(西門)や、西門から南門に至るまでの袖塀も同時期の赤レンガ造りで、いずれも重要文化財に指定されています。
噴水の前には、フランスの彫刻家ロダンの代表作「考える人」のブロンズ像も。世界に複数残るこの像の中でも、初期に鋳造されたものといいます。西の庭には平安京の石材、豊臣秀吉が築いた方広寺大仏殿の敷石や鉄輪、秀吉が鴨川に架けた三条大橋や五条大橋の橋脚や橋桁などの野外展示が点在し、京都の歴史に触れられる穴場的スポットとなっていますので、併せてご覧ください。開館時間は9時~午後5時30分で、5月13日と20日の月曜は休館日となっています。