価値観が多様化し、先行き不透明な「正解のない時代」には、試行錯誤しながら新しい事にチャレンジしていく姿勢や行動が求められる。そのために必要になってくるのが、新しいものを生みだすためのアイデアだ。しかし、アイデアに対して苦手意識を持つビジネスパーソンは多い。ブランドコンサルティングファーム株式会社Que取締役で、コピーライター/クリエイティブディレクターとして受賞歴多数の仁藤安久氏の最新刊『言葉でアイデアをつくる。 問題解決スキルがアップ思考と技術』は、個人&チームの両面からアイデア力を高める方法を紹介している点が、類書にはない魅力となっている。本連載では、同書から一部を抜粋して、ビジネスの現場で役立つアイデアの技術について、基本のキからわかりやすく解説していく。ぜひ、最後までお付き合いください。
あなたの脳に発想を活性化させる
「触媒」を投入する
ひとりでアイデアを考えはじめてしばらく経つと、全然アイデアが思いつかなくなったり、アイデアの出るテンポが悪くなったりします。
そんなときには、脳に発想を活性化させる「触媒」を投入しましょう。
その中のひとつが、私の中で「無責任に置き換え法」と呼んでいる方法です。やり方は、とても簡単です。
たとえば、「どのようにして男性に花を買わせるか?」という課題があるとします。アイデアの考えはじめは、次のようにいろいろと出てきます。
「花を買ったことがわからないような包装にして、恥ずかしさを軽減させる」
「デートに行く男性に、17~19時の間にタイムセールを行う」
「(妻に)謝るための花言葉を伝えていく」
などなど。
しかし、続けているうちにアイデアの出るスピードが鈍ったりしてきます。
そんなときに「無責任に置き換え法」を使います。
そのコツは、この課題の「要素の一部」を突拍子のないものに置き換えていくことです。
「男性」を「エイリアン」や「酔っ払い」などに置き換えてみます。
つまり、「どのようにしてエイリアンに花を買わせるか?」ということを考えてみるのです。
宇宙人に細かなことを説明しても伝わらないだろうから、
「いろいろな花のラインナップをやめて、赤いバラ専門店にする」。
異星に持ち帰ることができるように、
「ドライフラワーを買ってもらうようにする」
などとなります。
ターゲットや商品、サービスを置き換えてみる
エイリアンは突拍子もない相手ですが、それでもアイデアは出てくるはずです。
そして、ここで出たアイデアが、元の課題に当てはまるのかを考えていくのです。
置き換えるのは、「外国人」でも「武士」でも「女子高生」でも何でもいいですが、突拍子もなく無責任なもののほうが、たくさんのアイデアが出るようです。
置き換えるものは、ターゲットだけではなく場所や、そもそもの「商品やサービス」にもできます。
「花を買わせる」ということも変えてみましょう。
ここを「インスタントカメラを買わせる」とか「基礎化粧品を買わせる」とか、まったく違うものに置き換えていくのです。
ここでも、よくありそうなものというよりは、「えっ、そんなものを?」というくらい意外性のあるもののほうが面白いでしょう。
たとえば、「妊娠検査薬」とか「男性アイドルグループのCD」とか、通常のアプローチでは、男性がなかなか買わないものを設定してみましょう。
もちろん、元の課題に適応できないアイデアも出てくると思いますが、意外と使えるものが多く出てくるはずです。
アイデアに行き詰まったときこそ、このようなメソッドの使い時です。「無責任に置き換え法」を、試してみてください。
(※本稿は『言葉でアイデアをつくる。 問題解決スキルがアップ思考と技術』の一部を抜粋・編集したものです)
株式会社Que 取締役
クリエイティブディレクター/コピーライター
1979年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒業。同大学院政策・メディア研究科修士課程修了。
2004年電通入社。コピーライターおよびコミュニケーション・デザイナーとして、日本サッカー協会、日本オリンピック委員会、三越伊勢丹、森ビルなどを担当。
2012~13年電通サマーインターン講師、2014~16年電通サマーインターン座長。新卒採用戦略にも携わりクリエイティブ教育やアイデア教育など教育メソッド開発を行う。
2017年に電通を退社し、ブランドコンサルティングファームである株式会社Que設立に参画。広告やブランドコンサルティングに加えて、スタートアップ企業のサポート、施設・新商品開発、まちづくり、人事・教育への広告クリエイティブの応用を実践している。
2018年から東京理科大学オープンカレッジ「アイデアを生み出すための技術」講師を担当。主な仕事として、マザーハウス、日本コカ・コーラの檸檬堂、ノーリツ、鶴屋百貨店、QUESTROなど。
受賞歴はカンヌライオンズ 金賞、ロンドン国際広告賞 金賞、アドフェスト 金賞、キッズデザイン賞、文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品など。2024年3月に初の著書『言葉でアイデアをつくる。 問題解決スキルがアップ思考と技術』を刊行する。