宮城県石巻市がまたもアスベスト飛散を「隠ぺい」していた。本連載で報告してきたアスベスト飛散事故が非公表とされてきた事件に続いて、隠された震災がれきの仮置き場でのアスベスト飛散の状況を報告する。

がれき置き場で最大のアスベスト飛散

「石巻市の震災がれき仮置き場でアスベストがかなり出ているんですが、市は公表してないんです」

 筆者のもとにこんな電話が入った。東日本大震災の発生からもうすぐ2年を迎えようとする3月上旬のことである。提供してもらった資料は2ヵ所のがれき仮置き場でアスベストが検出されていることを示す。それによれば、石巻市内の長浜仮置き場では風下とみられる敷地境界1ヵ所で大気中のアスベストを測定しており、アスベストの1つクリソタイル(白石綿)が空気1リットルあたり42本(電子顕微鏡による計測)計測されている(アスベスト以外の繊維を含む総繊維濃度は1リットルあたり180本)。

 魚町西公園の仮置き場では方角の違う2ヵ所を測定しており、1地点で空気1リットルあたりアスベスト繊維(クリソタイル)26本(総繊維濃度170本)、もう1地点ではアスベスト繊維(クリソタイル)26本を検出した(総繊維220本)。

「最初にこの数を見たときは正直いって目を疑いましたね」と電話の主は明かす。それほど異常な数値なのだ。

 震災直後から現地入りして被災地におけるアスベストの状況を調査し、行政に対策を提言してきたNPO「中皮腫・じん肺・アスベストセンター」事務局長の永倉冬史氏も驚きを隠さない。

「震災がれきの仮置き場で、それも敷地境界でアスベスト濃度が10本を超えた事例なんて聞いたことがない」

 環境省と厚生労働省が共催する「東日本大震災アスベスト対策合同会議」で報告されている測定結果からも、今回の測定値の異常性が裏付けられる。この合同会議は被災地各地でアスベストのモニタリング調査を実施しており、また自治体による測定結果も集約している。そのなかで報告された震災がれきの仮置き場や処理現場におけるアスベスト濃度を調べてみても、延べ626ヵ所の測定のうち、アスベスト濃度が空気1リットルあたり1本を超えたのはわずか18ヵ所しかない(2012年12月20日報告まで)。