こうした危機的状況を乗り越えるための行動を評価したVCがヤフーのCVCであるYJキャピタル。同社がリードインベスターとなって投資を決断。その後、売上などの数字が回復したのを見て、フォロー投資家がどんどん集まり、12月に総額13億円の資金調達を実施するに至った。

競合企業「そとあそび」買収の狙い

未曾有の事態を乗り越え、再起を果たしたアソビュー。その過程で山野氏はニューノーマル時代の遊び方として、アウトドアレジャーの需要が伸びていることを実感している。

「ニューノーマル時代はソーシャルディス、オープンエアー、アウトドアいうキーワードが『安心・安全』という心理とつながっています。その結果、水族館より遊園地、美術館よりテーマパークといった屋外レジャー施設の売り上げが伸びているんです。この需要の伸びはきっと一過性のものではなく、アウトドアレジャーがニューノーマル時代の遊びの選択肢のひとつになるのは間違いないと思いました」(山野氏)

そんな遊び方の変化に対応するため、アソビューはアウトドア・レジャーの予約サイト「そとあそび」を運営するそとあそびを買収することにした。そとあそびは2004年の創業。同社はもともと個人が運営していたが、元ガイアックス代表執行役副社長の中島裕氏が2014年に個人で買収。さらに2016年にアカツキが14億円で買収したという歴史を持つ。

もともと、2020年1月頃から買収については交渉が進んでいたが、コロナの影響で交渉自体がストップ。その後アソビューの業績がV字回復し、資金調達の目途が立った秋頃に再度交渉を再開して合意に至ったという。

「アソビュー!は総合型のレジャー予約サイトで、そとあそびはアウトドアレジャーに特化したセレクトショップのような棲み分けです。実は掲載するレジャー施設も30%ほどしか被りがありません。アソビューは7500施設ほど契約施設がありますが、アウトドアレジャー施設はあまり多くないので、そとあそびが保有する550施設ほどの契約施設と連携することで掲載する施設の数も増やせればと思っています」(山野氏)

また、アソビューはそとあそびの買収によってユーザー数アップも狙う。

「コロナ禍により消費トレンドに変化が起こり、『ニューノーマル時代にはアウトドアレジャーが良い』という認識が増え、そのユーザー数が増えていくはずです」

「また、水族館や動物園の客単価は1人2000〜3000円ほどですが、アウトドアレジャーは1人5000〜8000円ぐらいします。アソビューの既存ユーザーに加えて、アウトドアレジャーの新規ユーザーを獲得することで平均客単価は据え置きのまま、ユーザー数が増えていくのが今後のアソビューの未来かなと思います」(山野氏)