「当時、この決断を下したときはドキドキしました。仮に2年間売上がゼロで、資金調達もできなかった場合、従業員の給与はどうやって支払えばいいのか。それを考えるだけでも恐ろしいですし、根拠がない賭けに出た感じです」
「とはいえ後々、過去の疫病の歴史と衛生状態、各国の感染対策、重篤化率の影響度のエビデンスを確認したときに、この状況は一生続くものではないとわかりました。また、経済活動がストップすることは繰り返すかもしれないけれど、2年間ストップし続ける状態で人々が生活するわけではないというのも見えてきていました。それをもとに自分の中で最悪の状況をシミュレーションした結果、夏頃に売上が20%回復する目処も立ち、『これはいけるかもしれない』と思うようになったんです」(山野氏)
在籍出向の仕組みなどを使って従業員の雇用を守った結果、家庭の事情で退職した1人の従業員を除き、全員がアソビューで今も働いている。この結果について、山野氏は「目的を明確に伝え、24時間稼働で目的達成のために何かしている姿勢を見せたことで、従業員に信用してもらえたんじゃないかと思います」と語る。
「コロナ案件は無理です」ベンチャーキャピタルからの一言
会社・サービスを存続させる──この目的を達成するために、山野氏が一縷(いちる)の望みをかけていたのが外部からの資金調達だった。山野氏によれば、もともと2020年6〜7月を目処に資金調達することを年初から決めており、すでにデューディリジェンスを行ったり、タームシート(投資契約の条件を記載した書面)の作成を終えたりしているVCがいくつかあったという。しかし、4月にコロナ禍による業績悪化が可視化されたタイミングで、資金調達の話はすべて白紙撤回に。
「当時、会社の状況として着金を急がなければいけなかったので、こちらからは話を進めていたVCには『このタームシートでいいから行きましょう』と言ったのですが、『(外資系のVCのため)本国の判断でステイになった』『先行きが見えないので投資をやめます』といった理由で投資は断られました」
「ただ、それでも多くのキャピタリストがFacebookなどのSNSで『コロナ禍でも積極投資します』と言っているので、1つ1つ直接連絡してみたのですが『コロナ案件は無理です』と言われてしまいました。そのとき『コロナ禍でも積極投資します』というのは、コロナ禍で伸びている企業には投資するけど、コロナ禍直撃の案件には投資しないということなんだ……と思いました。経済合理性で考えれば決して間違ってないですけど、感情面では全然追いつきませんでした」(山野氏)