レジャー産業全体のDX推進に活路を見出す
売上もほぼゼロになり、資金調達もできない。八方塞がりの状況の中、アソビューが活路として見出したのが「レジャー産業全体のDX推進」だ。
5月末に緊急事態宣言が解除され、外出自粛の要請が緩和されたことで各レジャー施設は営業していいのか、営業してはいけないのかの判断が求められるようになった。そんなレジャー施設に対し、アソビューは専門家の監修のもと、観光庁と情報連携し、新型コロナウイルス感染対策チェックリストや感染予防講習のプログラムを作成。加えて感染拡大予防ガイドラインを踏まえた「日時指定電子チケットシステム」をレジャー・観光・文化施設に対して期間限定で初期導入費・端末費無料で提供した。
この施策が功を奏し、緊急事態宣言の解除に伴う、お出かけ需要の回復とともにアソビューの売上も回復していった。
「コロナ禍の前は、多くの施設が窓口販売もしていましたし、コンビニ販売をしていました。電子チケットも購入できるようにはなっていましたが、電子チケット比率は5〜10%ほど。ですがコロナ禍、ニューノーマル時代のレジャー施設の運営方法と電子チケットの相性が抜群に良かったんです。誰もが持っているスマートフォン上でチケットを購入して非接触で入場でき、さらには場内の人数をリアルタイムで計測できる仕組みがあるからです。それで各レジャー施設が一気に舵を切った結果、アソビューの売上が回復し、8月には昨対比230%を超える数字を記録しました」
「レジャー産業に対してEC化率向上を仕掛けたのは私たちですが、緊急事態宣言が解除された後も本当にお客さんがレジャー施設に足を運ぶかどうかはわかりませんでした。消費者が長い自粛生活に痺れを切らしてお出かけ需要が増えたのは振り返ってみて、本当に運が良かったなと思います」(山野氏)
その後、GoToトラベルキャンペーンが開始されたことも相まって、人々のお出かけ需要は急増。それに伴い、アソビューの経営は右肩上がりで回復していった。12月末からGoToトラベルキャンペーンは一時停止となっているが、それでも那須ハイランドパークや小田原城など近場のレジャー施設にマイカーでお出かけする需要は依然として残っているという。
「GoToトラベルキャンペーンの一時停止でキャンセルは増えましたが、それによって都心部から車で行けるような近場のレジャー施設へのお出かけに切り替える人が増え、新規の需要も増えています。会社としてあまりダメージはありませんでした」(山野氏)