さらに寄付を受けたい応募者側から、毎日のように数多く寄せられているのが「Android版を早く出してほしい」との声だ。白石氏らは「Android版も来週にもリリースする予定で動いている」と説明する。

「決済サービスなら、僕らも知見があるので不正のやり口や使われ方がイメージできますが、kifutownには類似サービスがない。だから寄付者やデバイスを絞り、機能を限定的に出しています。寄付者と応援される側が自由にメッセージを送れたら盛り上がると思いますが、そういう機能もあえて作っていません。最初のうちは、極力リスクがないようにサービスを設計しました」(白石氏)

オンライン寄付サービスは本当にマネタイズできるのか

前澤氏個人の試みから、事業としての寄付プラットフォームへ移行したARIGATOBANK。これからはビジネスとしての継続性や収益についても当然、考えなくてはならない。白石氏は個人寄付の市場について、次のように語る。

「日本では、個人による寄付の市場規模は確かにあまり大きくないです。アメリカと比べると金額で2桁、名目GDP比では100倍の乖離(かいり)があります」(白石氏)

日本ファンドレイジング協会が発行する「寄付白書2017」によれば、2016年の日本の個人寄付総額は7756億円で名目GDP比が0.14%であるのに対し、アメリカでは30兆6664億円(2816.6億ドル)、名目GDP比で1.44%に上っている。

「アメリカでは個人の寄付をベースにしたビジネスがいくらでもある。例えば難病の子どもが手術を受けたいというときに、その親に代わって、手数料をもらってファンドレイジングするビジネスが成立しています。それをなりわいとするファンドレイザーやNPO職員といった職種が、アメリカでは人気職業ランキングにも入っています」(白石氏)

つまり、今後アメリカと同じような状況になるとすれば、日本には大きな伸びしろがあるというのだ。白石氏も、日本がアメリカのような状況に短期でいきなり変わるとは考えていない。だが「経済の二極化、分断する社会などと言われている現状を踏まえれば、日本にも結構、寄付ビジネスの可能性はある」と言う。

「二極化が進めば、今の国のシステムで受けられる社会福祉だけでは、賄えない部分が当然出てくる。すると、多少の余剰資金がある人が、自分より効率的に世の中のためにお金を使ってくれる人にお金を委ねたいというニーズが生まれるのではないか。ですから、マーケットとしては成長市場なんじゃないかという前提が、まずあります」(白石氏)