一方、kifutownは応援者が「こういう人たちを応援したい」とプロジェクトを立て、寄付を受けたい人がそこへ応募する、逆方向のスタイルだ。

ZOZO創業者・前澤氏の“お金贈り”を事業化、「kifutown」はオンライン寄付で何を目指すのか
 

白石氏は、応援されたい人からプロジェクトを立てるかたちも「将来的には可能性としてはある」と言う。ただ、現在のサービスコンセプトは個人への寄付を前提としており、法人やNPOへの送金は想定していない。そのため「まずは、組織の本人確認などをきちんと設計しなければならない」とのことだった。

現時点はサービスを開放しておらず、応援者になれるのは前澤氏のみ。まさに前澤氏がSNSで行っていたお金贈りをアプリ化しただけの機能しかないが、9月中にも寄付者を一般にも開放する予定だという。そこで気になるのが、反社会的組織による資金洗浄やテロ資金供与防止のための、寄付者の審査がどこまで行われるかという点だ。

「一般的な範囲で、反社会的組織やAML/CFT(マネーローンダリングおよびテロ資金供与対策)のチェックはもちろん行います。トランザクションや書き込み内容に法的問題がないかモニタリングする体制も用意しています」(白石氏)

しかし、今までにないプロダクトであるがゆえに、これまでの金融系サービスにはなかった課題も当然ある。白石氏も「すでに例がある決済サービスでは、守るべき点がある程度決まっている。それを押さえれば、誰が作ってもある程度同じクオリティになる。一方、僕らがやろうとしている寄付者側からお金を配るサービスは今までなかった。そこで法的な立て付けから考えなければならない」と語る。

「今回、我々は“お金贈り”の仕組みを、最初は収納代行サービスとして設計しています。将来的に決済をやるときには、現状では前払い(前払式支払手段の発行業務。プリペイド型の支払手段発行業者としての登録)をベースにサービス設計を考えています」(白石氏)

ただし、前払式支払手段発行業も規制が強化される方向にある。ARIGATOBANKでは資金洗浄対策などをどこまで自主的に取り入れるべきか、社内でも議論がなされているという。

「我々がイメージしていないユースケースにどこまで対応すべきか、どういう悪用の仕方があり得るかを類似サービスがない状態で想像しなければならず、結構悩みました」(白石氏)

また、プロジェクトを立てる寄付者としては気になるであろう、寄付したお金の使われ方についても、現状では使途を確認する仕組みはない。こちらについては「いずれ追いかけられるようにしたい」(山口氏)とのことだった。