“決済”よりもまず“寄付”をやる──前澤氏からの「LINE」

山口氏は「白石の入社前から、決済サービス単体ではビジネスとして勝つのが難しいことは分かっていて、ユーザーを巻き込む仕掛けが必要と考えていました。そこで決済サービスやインフラストラクチャーを作ったら、前澤のお金贈りなどを統合しながらソーシャルネットワークを作ろうと考えていたんです」と説明する。

「ところがある朝起きたら、前澤からLINEでものすごく解像度の高い、今のkifutownのベースになる事業の要件が届いていて、開発する順番が変わりました」(山口氏)

構想を詰める過程で山口氏は、他社と同様の決済サービスを始めるより先に、「お金の流れを変えて困っている人を助けるビジネス」を始めた方が、自社の狙いがユーザーに伝わりやすいと考えるようになっていった。白石氏は面接の際に、前澤氏のこれまでの(お金贈りなどの)行動をシステム化して、サービスに落とし込む提案をするよう求められたが、これが山口氏の構想と合致するものになっていたという。

「その時は今のkifutownの様相ではありませんでしたが、お金を相互に送り合うといったキーワードや、ウォレットサービスなどは盛り込んでいました」(白石氏)

こうしてkifutownの構想は固まった。しかし、いざプロダクトを生み出すとなれば、体制づくりも必要だ。白石氏は構想を実現するための事業計画案や組織図、プロダクトアウトラインなどを携えて前澤氏、山口氏との2度目の面談に訪れた。提案にはその場でゴーサインが出た。すぐに組織づくりのための採用活動が始まった。

採用はかなりのハイペースで進んだそうだが、さすがに3、4カ月は体制づくりにかかったとのこと。本格的にプロダクト開発が動き出したのは今年の春ぐらいからで、その開発にも、かなりのスピード感で臨んだという。

「リリースまで実質3カ月ぐらいの開発期間です。前澤からLINEで要件が送られてきてから2日ほどで、実装方法や法務的な整理をCTOの河津(拓哉氏)やエンジニアの何人かと検討してプレゼンし、そこからすぐに開発に入る。そんな感じのスピードでした」(白石氏)

現状は前澤氏限定の寄付アプリ、今秋からはプラットフォームの開放へ

前述したとおりkifutownは、寄付を受けたい人とそれを応援したい人とをつなぐ、CtoCの寄付送金プラットフォームである。

従来のオンライン寄付プラットフォームは、寄付を受けたい人や団体がプロジェクトを立て、そこへ寄付者がお金を出すという形式が一般的だ。たとえばクラウドファンディングなども、応援を受けたい挑戦者がプロジェクトをプラットフォームに登録し、その挑戦に対して寄付者が送金するスタイルになっている。