長年にわたって大手出版社を悩ませてきた「海外海賊版」問題。この課題を“熱狂的なファンの力”とテクノロジーを活かして解決できないか──。そのような発想のもと、小学館で漫画アプリとコミックサイトを運営するマンガワン編集部とマンガ特化の翻訳システムを手掛けるMantraが新たな取り組みを始めた。
両社は第一弾プロジェクトとして『ケンガンオメガ』などの正規翻訳版の制作をスタート。Mantraが開発する翻訳システム「Mantra Engine」とマンガファンによる“ファン翻訳”を組み合わせることで、日英版の同時配信を実現した。
Mantraによると正規翻訳版が配信されることを受け、一部の海外海賊版制作者グループからは海賊版制作の停止と公開済エピソードの取り下げが発表されるなど、変化が生まれ始めているという。
この取り組みで興味深いのは、作品に対する愛情が深い“ファン”に正規の翻訳版を作ってもらうということ。しかも今回は「もともとは海賊版を作っていた人たち」と交渉し、彼ら彼女らに翻訳を依頼しているというからなおさらだ。
プロジェクトの背景にはどのような考えがあったのか。Mantra代表取締役の石渡祥之佑氏と、プロジェクトを牽引した同社の関野遼平氏に話を聞いた。