1960年代の西部劇「荒野の七人」に登場したガンマンたちのように、「マグニフィセント・セブン(超大型7銘柄)」は勝ち続けている。これは、ほんの一握りの弾丸が的を射ることに投資家が全財産を賭けているという意味でもある。

 S&P500種指数は強気相場にある。欧米のインフレ統計の減速や、金利が来年早々に低下し始めるとの観測の広がりが支援材料となっている。だが、同指数は上位銘柄の占める割合が非常に大きくなっており、「強気相場」という言葉が持つ意味合いは以前よりも薄れている。

 アナリストの間で「マグニフィセント・セブン(M7)」と呼ばれる高成長ハイテク関連企業7社(アップル、マイクロソフト、アルファベット、アマゾン・ドット・コム、エヌビディア、テスラ、メタ・プラットフォームズ)がいなければ、S&P500種指数の年初来上昇率は19%ではなく8%にとどまっていたところだ。5日の取引では、市場全体が値下がりする中でもこれらの銘柄は小幅に上昇した。

 インデックス・ファンドの利用が一段と増えている投資家にとって、これは難しい状況である。現在、S&P500種指数に連動するファンドを購入した場合、資金の30%をわずか7銘柄に投じることになる。過去10年間の年末時点では、S&P500種指数に上位7銘柄が占める割合は平均21%となっていた。

 これは分散投資の原則に反するだけでなく、投資家が保有する最も重要な銘柄群が割高であることを意味する。M7企業は最近、高い利益を上げているが、それでも予想株価収益率(PER)は平均32倍と、S&P500種指数の19倍を上回る。これは米国の実質利回りが1%を下回っていた2019年のバリュエーションに近い。実質利回りは現在、2%を超えている。

 さらに、中型株や小型株との差も拡大している。PERは中型株が14倍、小型株が13倍で、格安の状態にある。最近発表された統計は米経済の「ソフトランディング(軟着陸)」を示唆しており、通常なら欧州株だけでなく、 小型株にとっても買いシグナルとなる 。

 市場は転機を迎えているのだろうか。この1週間は「M7」株が苦戦する一方で、割安株、すなわち「バリュー」株は急上昇した。ただ、今の上昇相場が始まった10月末に比べると、バリュー株の上昇は勢いを欠く。株式の大規模なローテーションが目前に迫っているとしても、市場ではその強力な手掛かりが見当たらない。

 学術的な研究では、小型株には「サイズ・プレミアム」があることが一貫して明らかになっている。すなわち、小型株は追加的なリスクを取らなくても長期的に超過リターンをもたらすことが多いのだ。この理論によると、知名度が低く、ブローカーからの注目度が低い企業は市場で過小評価される。このため過去10年間は、S&P500種指数に上位銘柄が占める割合がますます高まる中で、知名度・注目度の低い企業が総じて同指数をアンダーパフォームするのを防ぐことができなかった。

 それでも、エラスムス大学ロッテルダム経営大学院のローガン・エメリー氏とヨーレン・コエター氏が最近発表した研究報告書は、「サイズ・プレミアム」の歴史的な存在を確認し、市場集中度が高まるにつれて、同プレミアムが大きくなることを明らかにしている。こうした証拠が示唆しているのは、今日の貯蓄者は分散投資を始めるべきだということだと、エメリー氏は言う。

 この研究は一方で、「サイズ・プレミアム」を縮小させる対抗力の存在も明らかにしている。投資家がごく少数の企業の浮き沈みにますますさらされるポートフォリオを保有することを恐れるあまり、それらの企業の価値をより低く評価し、その後のアウトパフォームに道を開くことがあるというのだ。これまでのところ、この要因は小型株効果に負けがちだが、今後もそうなるとは限らない。

 株式市場の時価総額のかなりの部分がM7企業に集中しているため、これらの企業による個別投資が成果を上げた場合、小型株に分散投資するメリットが著しく低下する可能性があることも、この研究は示唆している。米オープンAIの対話型AI(人工知能)「チャットGPT」が火付け役となったAIブーム(すでに米半導体大手エヌビディアの売上高を前年比3倍に押し上げている)は、まさにそうした成果となり得る。

 だが、M7企業が独自に大きな成果を上げることを当てにするというのは「もろ刃のつるぎ」でもある。例えば、AIの恩恵を最も受けるのが誰かは不透明なままだ。また、メタのメタバースやテスラの自動運転車など、M7の価値を支えている他のメガトレンドはあまり有望視されていない。

 バリュエーションが超大型銘柄に不利に働く中、投資家は結局のところ、少数の大規模かつ予測不可能な技術開発に賭けている。映画「荒野の七人」のラストで生き残るのは、3人のガンマンだけだ。

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