今年は中国にとって転換点となり経済が回復に向かうはずだった。しかし結果はその逆だった。今となっては思い出すのも難しいが、2023年の初めには、中国の見通しはこれ以上ないほど明るかった。その理由の一つは、中国指導部が恐ろしい人的代償を支払ってまで、22年末にかけてゼロコロナ政策という絆創膏(ばんそうこう)を剥がして成長軌道に戻ろうとしたことにある。それが23年半ばになると、予測が外れた理由の解明を急ぐ人ばかりになっていた。よくある答えは、新型コロナウイルス対策のロックダウン(都市封鎖)を徹底した結果、家計心理が悪化したためというものだが、これは「木を見て森を見ず」である。コロナ禍に見舞われるずっと前から、北京の不動産バブル、政府の財政トリック、市場改革の遅れは景気停滞を予兆していた。コロナ下の状況は、この構造的な危機の原因だったわけではなく、そうした危機が避けられないことを見えにくくしていたのだ。中国政府は年初頃に2022年のGDP成長率が3%にとどまったと発表したが、それが実際にはマイナスだったと容易に主張できる。