2020年に香港で逮捕され、カナダで亡命を表明した「民主の女神」こと周庭さん。メディアのインタビューに日本語で受け答えし、日本の音楽やアニメが好きだという彼女はなぜ日本を選ばなかったのか。元公安でセキュリティコンサルタントの勝丸円覚さんに「亡命先としての日本の現状」を解説してもらった。さらに、いまカナダにいる周庭さんが中国共産党から身の安全を守る方法をアドバイスしてもらった。(セキュリティコンサルタント 勝丸円覚)
周庭さんが大好きな
日本に亡命しなかった理由
周庭さんはカナダに事実上亡命して一生帰らないと宣言しました。亡命先としてカナダがふさわしいかどうかを説明します。
確かに言えることは、日本よりはカナダの方が亡命に向いているだろうということです。日本は亡命する国としてあまりふさわしくありません。まずは、日本に亡命しない方がいい理由を説明します。
一番の理由は、日本は亡命を積極的には受け入れない国だからです。亡命する人はもともと住んでいた国を何らかの理由で追われてきている人ですから、受け入れる側にも外交上のリスクがあります。ましてや周庭さんの場合は、中国を相手にすることになりますから、日本も摩擦を産みたくないと弱腰になってしまうでしょう。これは過去の事例から見てもそうです。移住するならまだしも、亡命となるとそもそも受け入れてもらえない可能性があります。
また、設備の面でも日本はカナダのように十分なものを提供できません。通常、亡命者を受け入れる際は、セーフハウスという安全が確保された住居と警備を提供する必要があります。これまで積極的に亡命を受け入れてこなかった日本には、そうした施設や警備を提供するノウハウ、過去の蓄積がほとんどありません。仮に日本が周庭さんを受け入れたとしても、安全が確保される保証はカナダより低くなります。
カナダはこれまでも多数の亡命者を受け入れてきているので、設備や警備の面では日本より優れていると言えます。今後、周庭さんにセーフハウスが提供される可能性が非常に高いです。
日本と比較した時のカナダの優位性については、説明した通りです。では、カナダが最も安全な国かと言うとそうではありません。たとえば、隣国のアメリカであれば、CIAやFBIがいるので、周庭さんを中国共産党から守るという目的であれば、アメリカの方がより優れていると言えます。