被害が急速に拡大している吸血トコジラミ。日本では今年から流行していますが、何年も前からシラミ被害に頭を抱えてきたのがフランスです。世界最大の自転車レース、ツール・ド・フランスの取材中に被害にあったという筆者が「地獄」のような体験談を記します。(スポーツジャーナリスト 山口和幸)
かつて駆除されたシラミが
また流行しているはなぜか
シラミは日本でも古くから生息していたとされるが、戦後の有機塩素系殺虫剤DDTの散布(現在は使用禁止)などによって一時は駆除が進んだ。ところが、最近になると殺虫成分に耐性を持ったシラミが出現。さらに、コロナ禍が一段落して外国人観光客の着衣や荷物にまぎれ込んで侵入。大流行のおそれがあるとさまざまなニュースで警鐘が鳴らされている。
シラミには大きく分けて3つの種類があるという。多くは、主に子どもたちの髪の毛にとりつく「アタマジラミ」だ。教室やプールなどで頭をくっつけながら仲よく遊ぶため、他の子に移る可能性が高いという。
通常のシャンプーやブラシでは成虫や卵が落ちにくく、専用の強力な洗浄剤や目の細かいクシを使って駆除する。シラミがまん延して大きな社会問題になっているフランスでは、スーパーなどでたくさんのシラミ用洗浄剤が陳列棚に並べられているので、それだけとりつかれている人が多いということを物語る。
「ケジラミ」は陰毛などにとりつくタイプで、成人の性交渉などで媒介する。
ツール・ド・フランスの取材記者である私が2017年の大会最終日、パリの常宿で被害に遭ったのが「コロモジラミ」だ。J SPORTSが中継するツール・ド・フランスの現地レポートでも知られるカメラマンの辻啓さんも2019年に被害に遭っている。今回の記事には、辻さんに当時の被害状況を記録した画像を提供してもらった。