町中華やクリーニング店も?
日本にある中国の諜報網

 周庭さんが亡命したカナダにも、そして我々が暮らす日本にも中国のスパイは数多くいます。

 中国は各国にいる留学生やビジネスパーソンを後から協力者としてリクルートします。各国の中国大使館は、その国にいる中国人の膨大なデータベースを持っていて、その中から協力者に適した人間を洗い出します。そして、在日中国大使館にも10名程度いるとされるスパイマスターと呼ばれるプロのスパイが、リクルーターを使って該当者を協力者としてスカウトする仕組みです。
 
 スパイではない一般人をスパイ活動の協力者にしていくので、中国の諜報網は現地当局もすべてを把握することは難しい。

 さらに、密告制度のようなものがあって、スパイの協力者たちは情報の質に応じて報酬を受け取ることができます。実際、公安時代に町中華やクリーニング店がその窓口になっていることを突き止めたことがあります。
 
 京都大学名誉教授の中西輝政氏によると、オーストラリアには中国スパイとその協力者が数万人いたといいます。単純に人口比だけで考えれば、日本にはその5倍いてもおかしくない。オーストラリアの規模が5万人だとすると、25万規模の中国のスパイとその関係者がいても不思議ではありません。

 こうした町中華などが情報を捕捉する投網式の諜報にだけでなく、加えて中国はピンポイントでピンポイントで諜報を仕掛ける方法があります。最近だと研究機関「産業技術総合研究所」に所属していた中国籍の研究者が、研究データを中国企業に流出させた事件がありました。そのときは、日本にいる中国人の膨大なデータベースの中から、「長くその会社で働いているこの人物がよさそうだ」などと狙いを定めて、情報を提供させる方法を取ることもあります。

 各国にいる中国スパイの協力者が狙っているのは、企業機密や中国人に関する情報だけではありません。実は、日本人もターゲットにされる可能性があります。

 たとえば、秋葉原に中国の警察の出先機関とされる「海外派出所」があったことが話題になりました。最優先の監視対象は中国人ですが、日本人でも中国のオウム真理教と言われる「法輪功の信者」とかウイグル弾圧に反対する中国人を支援している日本人なども監視されています。

 このように皆さんの生活圏にも中国のスパイとその息がかかった協力者は潜んでいます。一般人の皆さんは直接危害を加えられることはありませんが、彼らの活動は日本にとって大きな損失をもたらしています。また、周庭さんのような特別な立場になると監視の目は一段と厳しくなるのは明らか。実際に香港政府トップが「自ら出頭しない限り、生涯にわたって追跡されることになる」と脅迫しています。世界のメディアは彼女の発信に継続して注目していかなければなりません。それが彼女を守ることにもつながります。