2018年、米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)の経営幹部会議で、メアリー・バーラ最高経営責任者(CEO)は方針を180度転換して周囲をあぜんとさせた。自動車メディア各社がすでに非常に好意的な評論記事を出していた高級車ブランド「キャデラック」新型モデルの販売計画を取りやめたのだ。中止の理由はガソリンを大量に消費するV型8気筒(V8)エンジンにあった。GMを電気自動車(EV)の旗手に変貌させることを目標に掲げるバーラ氏は、技術革新で知られるキャデラックのブランドで化石燃料技術に基づいた派手なモデルを送り出すのは、誤ったメッセージになると判断した。バーラ氏は10年前の今週、現状を揺るがすという使命を帯びてCEOに就任した。GMは2009年の経営破綻から立ち直ったばかりで、創業から115年を経た老舗メーカーの鈍重な企業文化には大改革が必要だった。CEO任命によって「ガラスの天井(性別や人種を理由に昇進を阻まれる状態)」を破ったバーラ氏はそれをもたらす可能性があった。