辛いときに救われた師匠の言葉

 そんなとき、ある師匠との打ち合わせに臨みました。いつものように漫才台本やアイデアをたくさん用意し、打ち合わせに出ると、私のネタを見た師匠がこう言ったのです。

「ええなぇ。よく練られてるわ」

 私は肩の荷が降りるような感覚がありました。これまで、モヤモヤしていた気持ちが一気に晴れたのです。このとき私が気がついたのは、仕事は誰かに評価をしてもらえないと辛いということです。

 もちろん、それまで仕事をたくさんいただいていたわけですから、評価していただいてたとは思うのですが、忙しくなっていく私にはそれがなかなか感じ取れていませんでした。

 そんな私に対して、師匠の「ええなぁ」という言葉は、短い言葉なのにもかかわらず、これまでの努力が報われた気がして非常に刺さったのです。

 このことからもわかる通り、どこまでいっても他人の評価を意識するものです。ちょっとしたこと、些細なこと、当たり前のことでも褒められると嬉しいですし、次も頑張れます。

 このことを身をもって体験した私は、今でも教え子とコミュニケーションを取るときは必ず、フィードバックをするようにしています。「〇〇はよかったね」「あの入りは2人の漫才っぽいね」と声をかけると、やはり多くの芸人の表情が明るくなります。

 些細なことですが、相手をすごいと思っているなら、それをしっかり言葉で伝えましょう。それだけで、まわりの人のモチベーションは一気に上がります。

 かつての私のように、ちょっとの言葉で救われる人もいますから、ぜひ頭の片隅に入れておいていただけると幸いです。