将来の計画を立てても意味がない
――そうはいっても才能がなかったら直木賞はとれませんよ。
それは才能じゃなくて、私の運がよかったのでしょう。100歳でこうして一軒家に住んでいられるのも、運がよかったからですよ。運というのはね、やっぱりあるんです。
――運はあると。では、その運はどうすればよくなりますか。
さあ、わかりません。誰にもわからないでしょ、そんなことは。みんな自分の運の良し悪しが気になるのは、わからないからですよ。
――たとえば、あらかじめゴールを決めておいて、そこに向かって計画的に準備をしていけば、才能や運など関係なしに成功を手に入れられるとは思いませんか。
計画するっていっても、何が成功かなんてわからないじゃないですか。億万長者と結婚したら幸せと思って、そのために一生懸命努力して、いざ結婚してみたらちっとも幸せじゃないかもしれない。人生はそんなことの連続なんです。人の価値観だってずっと同じじゃないし。
――佐藤さんは作家になったとき、どうすれば成功するかとは考えませんでしたか。
考えませんよ、そんなこと。だいたい成功したいとか、幸せな人生を送りたいとか思っていたら、作家になんかなっていません。
それに、成功や幸せのようなはっきりしないものを追い求めたってしょうがないし、面倒くさいじゃないですか。だから2度も離婚する羽目になったのでしょうけどね。でも、だからなんだですよ。
そんなことはあまり熱心に考えてもしょうがない。人生は行き当たりばったりでも何とかなるものです。