なぜ人は自宅をゴミ屋敷にしてしまうのか。いつ、誰がそうなってもおかしくないと警鐘を鳴らすのは、ゴミ屋敷専門パートナーズの石田毅代表だ。家主たちに共通する事情とは一体何なのか。彼らの職業や働き方にも「ある傾向」が見られるという。さらに、昨今の社会情勢を反映して依頼者の女性比率も高まっているそうだ。今、ゴミ屋敷に何が起こっているのか。最前線でゴミ屋敷に携わる3人の清掃スタッフに話を聞いた。(取材・構成/ダイヤモンドライフ編集部)
ゴミ屋敷の住人に
看護師と大学教授が多い理由
ーーゴミ屋敷の家主はどのような方が多いのですか?
石田毅(以下、石田) きっと 皆さんはゴミ屋敷のオーナーの方は 孤独な方が多いと想像されるかもしれません。もちろん、孤独な人も多いのですが、深刻なケースほど「プライドが高く、恥を感じやすい人」が増える傾向があります。分かりやすく言うと、 落ちている履歴書の経歴がものすごく高学歴、中には東京大学を卒業していた人もいました。
山田一仁(以下、 山田) 依頼主に多い職業として 代表的なものは、 看護師、介護士、運送業、ライターや映像制作などクリエイティブ系の仕事に携わっている人でも悩まれる方は少なくありません。こうした職業に共通するのは、夜勤があったり、締め切りに追われていたりして夜まで働いていることです。決まった時間に仕事をする一般企業に勤めている会社員の方は、実はそこまで多くありません。
石田 依頼主さんが私たちのところに来た段階では、 電話口でもわかるほど声に張りがなくボソボソと話し、実際にお会いすると生気がなく魂が抜けたような表情をされている方がほとんどです。
ーー なぜそのようになってしまうのでしょうか?
石田 共通しているのは、仕事が最優先されていて「自分の優先順位が下がってしまっている」という点です。例えば毎日のように締め切りに追われているようなライター さんがいるとします。
彼らの中では 締め切りまでに原稿を書くことが全てにおいて優先されますから、部屋の掃除は二の次になっていきます。 自炊をする時間もありませんから、コンビニで買ってきた弁当のゴミが机に溜まっていく。こうした状況が続くと「茹でガエル」 状態になり、 ゴミがある状態が普通になっていく。 そして、どんどんゴミが溜まっていくのです。 休日に仕事に駆り出されるようなことがあれば、ゴミを捨てる 気力など残っていません。
なので、ゴミ屋敷の家主は月に3、4回しか休暇がないという人が多い傾向にあります。要は働きすぎて疲れているのです。
山田 先ほどは出ませんでしたが、 一人暮らしの大学教授からもよく依頼があります。彼らと話していて、研究対象に注力しすぎていて、「自分の優先順位を下げている」と感じます。
自分の好きなことに入れ込んでいて、それ以外のことが見えなくなっているというか……職業の特性上、そういう方でないとしていけない職業なのかなと思います。
リピートされる方もいて、3年連続で清掃させていただいた方もいらっしゃいました。社会的な立場が高い方々ですし、聡明な方ばかりなので「プライドが高く、恥を感じやすい人」と言えます。