不定期で連載をしてきたこのコラムも、今回で最終回となりました。
最後は、タイトルにふさわしく、リアルタイム・ビジネスの重要性と、それを支えるITの作り方について考察をしてみたいと思います。
リアルタイム・ビジネスで、私が大切だと思っていることは、3つです。
1. テクノロジーにこだわること
2. ITをコストとして考えないこと
3. データと現場にこだわること
1.テクノロジーにこだわること
最近、『リバース・イノベーション』(ビジャイ・ゴビンダラジャン, クリス・トリンブル (著))、という本を読んだのですが、示唆に富んでいて、大変面白かったです。
この本の主旨は、「先進国で売れた製品やサービスは、数年後に必ず発展途上国でも売れる」というグローカリゼーションは、最早、幻想であるというものです。
その理由は、驚くべきITの進化にあり、30年前の先進国のニーズを当時の技術で解決をした製品を、周回遅れで発展途上国に展開したとしても、受け入れられない。今の発展途上国のニーズを先進のITによって解決する商品やサービスを提供しない限り、絶対に生き残れない、それほど、ITの進化は環境を変えてしまっているという、とても的を射た論を展開しています。
この本に載っている事例ではないのですが、有名な「インドの洗濯機」の話はご存知でしょうか?インドでは、停電が多発する、でも、日本の高性能な全自動洗濯機は、停電が起きると、最初に戻って、また、給水から始める、つまり、インドでは永遠に洗濯が終わらないことになってしまいます。それに対して、サムスン社は、超小型バッテリー内蔵メモリーチップを搭載することでレジューム機能を実現して大ヒットしたという有名な事例です。
これは、後述する「現場にこだわること」にもつながるのですが、ここではそれよりも、「ITの進化は、新たなニーズとその解決方法を、異なる進化形として生み出す」と認識しておくことが重要だと思っています。
このコラムでも書いてきたリアルタイム・ビジネスを実現するためのテクノロジーの事例は、ほんのわずかな期間に、既に実用化され、また進化を遂げています。