1月2日に羽田空港で起きた飛行機の衝突事故の背景に、「過密ダイヤがある」と指摘されている。ただ、データを確認すると、事故はむしろ減少傾向にある。国際比較しても羽田だけが特に忙しいというわけでもない。複数の関係者に聞いたところ、「管制官の人員減を何とか克服してきたが、そろそろ限界かもしれない」といった切実な声も。いったい何が起きているのか。(空港アナリスト 齊藤成人)
>>前編『羽田空港、夢物語の拡張計画が「秘策」でついに具体化!“
空港拡張のボトルネックとなりかねない
管制官など人手不足の大問題
急成長する航空需要を取り込もうと、アジア各国は積極的な「空港新設・増設プロジェクト」で競争の火花を散らしている。対して日本は、アジアで最も太平洋側に位置する地理的条件と、歴史的経緯から米国エアラインとの結び付きが強いことに、大きなアドバンテージがある。
具体的にはまず、成田空港の第3滑走路新設と、時代の変化に合わせた「ワンターミナル化」で迎え撃つ。加えて、羽田空港は人工地盤の造成という秘策を繰り出す計画だ。
ここで現状を整理してみよう。イギリスの航空コンサルティング企業OAGによる、「海外都市へのアクセス数」で評価する「世界ハブ空港ランキング」で、羽田空港は第5位(表1)。このランキングに拡張後の成田空港も加われば、わが国の国際アクセス競争力は維持できるだろう。
ところが、それを阻む大問題が横たわっている。管制官をはじめとした空港人材の人手不足である。1月2日に羽田空港で起きた飛行機の衝突事故は、事故調査の結論が出ていないが複数のヒューマンエラーが重なった結果ではないかと推測されている。空の安全を守るために改めてクローズアップされたのが、管制官の存在だ。
一部報道では、羽田の事故の背景に「過密ダイヤがある」と指摘されている。ただ、後述するように、航空事故に関するデータを確認すると、事故はむしろ減少傾向にある。国際比較しても羽田だけが特に忙しいというわけでもなさそうだ。複数の関係者に聞いてみたところ、「衛星システムなど技術面での向上や管制空域の再編で、管制官の人員減を何とか克服してきたが、もしかしたらそろそろ限界かもしれない」といった切実な声があった。