中国国家統計局が推計する販売中の完成住宅在庫を現在の販売ペースで割ると、処理には3.6年要する。ただ、中国は販売後に住宅が完成するケースが多く、未完成物件も勘案すると事態はより深刻だ。

 現在の住宅の建設ペースをならすと59億平方メートルとなるが、販売ペースは10億平方メートル弱にとどまる。この需給のギャップが続くと、現在建設中の住宅を売りさばくには6年を要することとなる。

 これらの試算は、現在の販売ペースが維持できる前提だ。しかしながら、投機的な需要を除いた住宅への実需を人口動態、都市化率、世帯の平均人数を基に試算すると、中長期的に今後、販売ペースは低下傾向をたどることになる。

 中国当局は、金融危機後の欧米のような早期の思い切った不良債権やバランスシートの処理という外科手術は回避し、時間をかけた漢方治療の道を選んだようだ。

 時間をかけた不動産バブルの調整が長期停滞を招くことは、わが国の経験からも明らかだ。加えて、バブル処理の負担を負わされた銀行部門の体力がむしばまれると与信姿勢も慎重になり、停滞に拍車を掛けかねない。

(オックスフォード・エコノミクス 在日代表 長井滋人)